狐の呉れた赤ん坊(1945)のレビュー・感想・評価
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いい話だった。育てていく人情話なんだろうなと思ってたけど、実はその...
いい話だった。育てていく人情話なんだろうなと思ってたけど、実はその子が御落胤だったという仕掛けがあり、後半は思わぬドラマ展開を見せてくれる。
スクスクと育って7歳になった善太(津川雅彦)サムライになりたいとか言い出す。仲間の子供たちと大名行列ごっこして遊んでたら、向かい側から本物の大名行列がくる。ヤベェよってなるんだけど道をあけずに突き進んで妨害したとして、子供とはいえ侍のしきたりで死刑になる。
それで身代わりに俺を斬ってくれと直訴にいく寅八(阪東妻三郎)。
本当の父親じゃないのに大した奴と認められ、善太も寅八もお咎めなしとなる。人足のみんなで集まってお祝いすると、酒にベロベロに酔っ払った寅八が実はあの子は「ごらくいん」なんだよとか適当に言ったら騒動になってしまい、しかもそれが本当だったという話。
最初は荒くれ者みたいだった寅八がスゲェ良い父親になっていくストーリーが良いし、息子と離れたくない、息子の幸せを願うの葛藤の場面も良かった。
「おめえは宿場のみんなに優しかったが殿様になっても領内のみんなに優しくするんだゼ」とても優しく良いオヤジ。ハッピーエンド。
刀を赤ん坊に持ち換えて
暴れん坊だけど気のいい川越人足・寅。街道に出る狐を退治に行こうとしたら、そこには捨てられた赤ん坊が居て…。
製作されたのは1945年。終戦の年。
GHQの厳しい検閲で、チャンバラ時代劇が作れず、苦心の末作られたのが、この人情時代劇。
チャンバラだけが時代劇ではない。ましてや、当時の人全員が刀を持ってチャンバラをしていた訳でもない。今以上に義理人情があった時代。
山中貞雄の名作「丹下左膳余話 百萬両の壷」と共に、人情時代劇を定着させ、時代劇の可能性を広げた作品と言えよう。
赤ん坊を育てるハメになった寅。最初は嫌々、悪戦苦闘だったが、次第に情が沸く。酒も喧嘩も博打も止め、子供の為にひたすら奮闘。元気に育った子供を誉められると大層嬉しそうな顔をし、粗相を犯した子の身代わりになろうともする。
二人は擬似親子。どうして擬似親子は、実の親子以上に親子の在り方を訴えられるのだろう。
昔も今も、この設定は見る者の心を温かくする。
やがて、大名の子である事が分かって…。
ずっと一緒に居るか、子供の才を信じ送り出すか。
ここが擬似親子の辛い所だが、最後は清々しく爽やかな感動。
主演は大スター・阪東妻三郎。実生活でも役者として大成する子供たちを育てた父。粗野だがお人好しの寅を好演。
そして愛くるしい子役は、何と何と何と、津川雅彦当時5歳!
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