「物足りない名作」飢餓海峡 kazzさんの映画レビュー(感想・評価)
物足りない名作
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日本の犯罪映画史に残る名作に位置付けられているが、人物描写がやや雑な気がする。
三國連太郎演じる犯人と、左幸子演じる娼妓は、二人とも直情的で感情の変化が唐突だ。殺す側が常軌を逸するのはよしとしても、女にも一瞬で我を忘れてしまう理解し難い感情の起伏が見られる。
前半の事件を追う刑事伴淳三郎は、キャラクターが立っていてアジがある。
自分の勘を頼りに地道な捜査を続ける。
実直で頑固一徹、現場叩き上げ刑事のステレオタイプだ。
一方、後半の事件を担当する刑事高倉健は、その上司も含めて説得力に欠ける。
伴は自分自身が気になってしまう謎を反芻しながら地道な操作を行う。が、高倉は直感的に疑いを持ち、そこには根拠が乏しい。部下の勘を盲信して上司は捜査方針を決めてしまうのだ。
犯行の動機が犯人の生い立ちに起因するところも、説得力がなく、砂の器に比べると大いに見劣りする。
ラストは警察の大失態で、まさかの終わり方。
何やら社会性を匂わせようとしているが、伝わらない。
3時間の長尺を一気に観せる迫力があり、その演出は評価できるが。
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