劇場公開日 1965年1月15日

「あっという間の3時間。左幸子が迫ってくる。」飢餓海峡 M.Joeさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0あっという間の3時間。左幸子が迫ってくる。

2023年10月14日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

約3時間という長編でありながら一時も目を離すことなく見ることができた。素晴らしい。戦前から戦後の混乱の中で、実際の青函連絡船の海難事故をベースにしたストーリー展開はとてもリアルで、複雑に絡み面白い。水上勉原作。内田吐夢監督。これは傑作である。
現代の映画のようなCGや派手な演出、多くのカット割りなどは、ここにはない。

事件を追いかける刑事と犯人、そこに女が絡む。この白黒の画面と役者たちの迫真の演技がドキュメンタリーのように現実的な深みを醸し出している。
極貧の状態を経験したものでないと分からない心の闇。しかし彼らの心はすさんではいない。

中でも左幸子の一途さと男に恋い焦がれている心の優しい女性の描写は見るものを圧倒する。凄いのである。下北半島大湊に住む女性でその東北弁がとてもマッチする。
男性陣では、三國連太郎、高倉健、中でも伴淳三郎がいい味を出している。

@広島市映像文化ライブラリー

コメントする
M.Joe