カンゾー先生のレビュー・感想・評価
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「一途で一所懸命な主人公は、必ず初心を忘れ、味方を裏切ってしまう」の法則
昔から、未鑑賞ながらも気になっていた作品の1つだったので、サブスクにて念願の鑑賞。
終戦間近の日本が、舞台の設定ではあるが、
「スワロウテイル」よりもあとの、1998年の作品としては、
かなり古ぼけた、古臭い印象の強い映画。
やっぱり今村昌平は、一昔前の映画監督なのだなとも思った。
主人公のカンゾー先生は、庶民の味方で、一途で一所懸命。
いつも先代の遺言通り、走って往診する。
そういう生真面目な主人公は、物語の中盤辺りに、
一途で一所懸命なキャラクターが裏目に出て、
別の事に心を奪われ、初心を忘れてしまう。
「グレイテスト・ショーマン」の主人公と、全く同じパターン。
そして、味方を裏切ってしまった自分を猛省し、心変わりをして、初心を取り戻す。
感動系映画の、定型文のようなストーリーと主人公設定で、
ストーリーも、特に真新しさは無い。
また、「グレイテスト・ショーマン」に似ている構成ではあるが、
その作品よりも、もう一昔前の作品でもあるので、
差別に対して、「グレイテスト・ショーマン」よりも、
無自覚な所も、随所散見できる。
戦時中の物語なので、男女差別にしても、職業差別にしても、
史実としてあるのは当然なことだけれど、
それを表現する際に、作り手側が自覚的か無自覚的かでは、
だいぶ表現の印象が変わってくる。
なので、作品全体を通して、女性に対する扱い方が「無自覚的」に酷い。
鑑賞出来て良かったなと思える部分は、
麻生久美子がまだ新人で、今と違って大根役者なセリフ回しで、
素人っぽさの中に色気がある所と、濡れ場シーンが観られるところ。
エロ劇画家出身の田口トモロヲの、出自を感じさせるような、
変態エロさを垣間見られるシーンがあるところ。
これは、おそらく、今ではもう観られない部分なので、確認できてよかった。
ついでに、北村有起哉の青年期も新鮮で、良い。
良かった演者
柄本明
麻生久美子
伊武雅刀
普通の町医者ものの映画とは一線を画す
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