劇場公開日 1966年2月5日

「好いた男にゃとことん弱く、ポンと投げ出す玉の肌!」河内カルメン 因果さんの映画レビュー(感想・評価)

4.5好いた男にゃとことん弱く、ポンと投げ出す玉の肌!

2024年10月13日
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「好いた男にゃとことん弱く、ポンと投げ出す玉の肌!」というAmazonプライムの簡潔明快にして叙述トリック的なリード文が素晴らしい一作。

したたかな田舎娘が淡々と数多の男の間を渡り歩くという初期ゴダールのような映画だった。思えば野川由美子の瞳のデカさはなんとなくアンナ・カリーナに通ずるものがある。

野川由美子演じる美しい村娘露子は別に尻軽というわけではなくむしろ純情ですらあるのだが、彼女の周りで次々と巻き起こる出来事が彼女を常に突き動かし続ける。それを一般的には「非業な運命」とかいうんだろうけど、そんな感じが一切しないのは露子があまりにもあっけらかんとしているからだろう。

男を振っても男に死なれても次の日にはケロッとしている露子。彼女には現在しかない。カットが切り替わるたびに彼女は生まれ変わっている。そういう意味において非常に映画的なヒロインだった。

露子の恬淡さは単に映画的快楽をもたらすだけではない。男に振り回されながらも同じ勢いで男を振り回す豪放磊落とした生き様は、あるいは「私セックスは嫌い」と男に向かって言い放つラディカルさは、まだまだ貞淑さが美徳であった昭和後期の日本映画においては非常に先進的だったといえる。

「何もしなくていいよ」と言われたらマジで何もしない、酔っ払ってグラスを割っても振り返りさえしない、かといってただのお転婆娘とは異なり仁義を通す。幼馴染に小切手を残してツーショットの写真を破り捨てるショットが非常に清々しかった。

因果