「前向きな明るさと生命力に満ちた野川由美子がその美貌を生かして、転身・変身していく様が魅力的」河内カルメン Kazu Annさんの映画レビュー(感想・評価)
前向きな明るさと生命力に満ちた野川由美子がその美貌を生かして、転身・変身していく様が魅力的
鈴木清順監督による1966年製作(89分)の白黒日本映画。配給:日活、劇場公開日:1966年2月5日。
主演の野川由美子と言えば自分的には必殺仕置人のイメージだが、こんな魅力的な女優さんであったことを、初めて知った気がした。
河内の田舎のおぼこい生娘が、パブの女給兼踊り子、ファッションモデル、金持ちの妾と、男たちに振り回されながらも、その美貌を生かして転身・変身していく様がお見事。何より、前向きな明るさと生命力に満ちたキャラクター設定が魅力的で、野川由美子が見事にそれを体現していた。清順監督のコミカルな演出も、良く合っていた。
あと、パブでの酔っ払いの贔屓客、野川にいれあげて勤め先の信用銀行のお金を使い込み、クビになったあげく彼女と一緒に暮らすことになる佐野浅夫が、小市民中年おじさんの、自分も身につまされる悲哀というか、何とも憎めない良い味を出していた。野川が2人が暮らした部屋を出ていく際、辛さを打ち消すため彼女に頼まれての怒った挙げ句追い出す演技が、何とも秀逸であった。
レズの相手として狙ってくるモデル時代の雇い主楠侑子、そこから野川を救ってくれる楠のセックスフレンド川地民夫。彼女を囲う金貸し業のの嵯峨善兵は、抱くこともなく歩かせてその脚を鑑賞し、コスプレによるブルーフィルムを撮ることに夢中。これら何とも奇妙な都会的な人物群も、60年代後半の日活映画らしくて、なかなかに良い。
監督鈴木清順、脚色三木克巳、原作今東光、企画坂上静翁、撮影峰重義、美術木村威夫、音楽小杉太一郎、録音片桐登司美、照明河野愛三、編集鈴木晄、スチル荻野昇。
出演
武田露子野川由美子、武田仙子伊藤るり子、武田きく宮城千賀子、武田勇吉日野道夫
坂由彰和田浩治、勘造佐野浅夫、高野誠二川地民夫、不動院の良厳坊桑山正一、斎藤長兵衛嵯峨善兵、雪江松尾嘉代、稲代和田悦子、和子加藤洋美、鹿島洋子楠侑子、「ダダ」のマネージャー柳瀬志郎、女秘書横田陽子、課長島村謙次、アパートの隣の女深町真喜子、女給A若葉めぐみ、女給B森みどり、女給C西原泰江。