劇場公開日 1971年7月17日

「ガメラ対ゴジラ、大映対東宝 怪獣代理戦争がなぜ勃発したのか?」ガメラ対深海怪獣ジグラ あき240さんの映画レビュー(感想・評価)

3.0ガメラ対ゴジラ、大映対東宝 怪獣代理戦争がなぜ勃発したのか?

2020年3月24日
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鑑賞方法:DVD/BD

1971年7月公開
例年通りなら3月公開なのに本作は初めて夏の公開になった
理由は何か?
一つはライバルのゴジラシリーズが終了してしまい夏休みという大きい市場を独占できる見込みがあった
事実前年の1970年にはゴジラ映画は春、夏、冬と1本も無かった
だから翌年もそうなる公算は高かった
なので春休み興行を夏休み興行にスライドさせるのは合理的な判断と思う
製作の遅延ということは考えられもしない

もう一つはタイアップの本作の舞台となる鴨川シーワールドとの兼ね合いだ
鴨川シーワールドは1970年10月にオープンしたばかり
そして本作公開の1971年7月には内房線が全線電化されている
夏といえば海水浴
首都圏の人なら家族旅行で海水浴といえば千葉、それも房総は定番中の定番
鴨川は外房にあるが、内房線の終着駅なのだ
つまり全てタイアップ先の鴨川シーワールドの営業効果を最大化するために7月公開になったのだ
劇中で対策本部が置かれるシーワールドホテルもそれにあわせて1971年の夏前に開業している

本作の開業当時は、ディズニーランドができる10年も前だったのだから、日本中から集客できる魅力のある施設だったのは間近いないと思う

もちろんその客層は怪獣映画と丸かぶりする
素晴らしいタイアップ企画だ
営業サイドからそれに合わせて7月公開を要請するのは当然だろう

自分も家族旅行で行って迫力あるオルカショーを楽しんだ事が有るが、本作公開の開業当時から何十年も経っていてもショボさが全く無い素晴らしい施設だった記憶がある

しかし流石に当時はタイアップ先の施設のミニチュアセットを盛大に破壊し尽くすこともできず、破壊シーンはショボい
序盤にジグラ星人が人工地震で東京をマクニチュード12の巨大地震で壊滅させるのだが、それシーンは絵でごまかしてあるのみ
そもそもそんな特撮シーンをとるほどの予算は無いしそれをやったら別の映画に名ってしまう

内容的にはガメラ対バイラスのリメイク風味
人質の生命と引き換えに簡単に地球防衛軍司令が降伏してしまうところまでおなじ
ジグラの刃物形状はギロンの焼き直し
ジャイガー程強くは無い

特撮は冒頭の月面基地破壊シーンのみ見るべき価値がある
宇宙空間の表現はギロンの時の漆黒の宇宙空間と瞬かない恒星の表現から書き割り風のショボいものに退化してしまっている
月面基地、月面車のミニチュアセットも小松崎茂テイストのレトロさで陳腐
しかし、ビームの直線的表現と爆発シーンは素晴らしい
ジェリーアンダーソンの謎の円盤UFO でのムーンベースがUFOにビーム攻撃を受けるシーンを参考にしていると感じた
このシーン、そもそも本作には物語の進行にはなんの関係もないから撮る必要とないはず
ビームが当たり土砂を巻き上げながら周囲に構造物の破片が飛び散る映像は望遠レンズとスロー撮影を駆使したもので、謎の円盤UFOの映像を自ら再現したかったのだと思う

さて、7月公開にスケジュールを移動して、ゴジラのおない夏休み興行でがっぽり稼ぐ思惑であったのだが、しかし、そうは旨くいかなかった

なぜなら、そうはさせじと東宝がゴジラ対ヘドラを出してきたからだ
なんと1971年の7月はガメラ対ゴジラの直接対決となったのだ

東宝から見ればガメラがうちの縄張りを荒らしに来たように見えたのかも知れない

内容的も本作にはジグラ星人の地球侵略動機も地球人の海洋汚染にあるとしており、ヘドラともテーマ性はかぶってしまっている

興行成績は両作品ともまずまず立ったというから、引き分けというところか

ともあれガメラ映画としては並の上の出来だ
また来年の夏休みみたいなあと思う程度には達している
来年もガメラ対ゴジラ、大映対東宝
怪獣代理戦争が楽しめるはずだった
しかし同年12月、経営危機の大映は倒産してしまう
ガメラシリーズも本作で突然の終了となるのだ

1980年の宇宙怪獣ガメラは昭和ガメラシリーズとして紹介されるが、シリーズに入れるのは違和感がある
入れててもエピローグ扱いだろう

あき240