「今ならレーイティングが子供向けに出来ないと思います」ガメラ対宇宙怪獣バイラス あき240さんの映画レビュー(感想・評価)
今ならレーイティングが子供向けに出来ないと思います
1968年3月公開
この年の春は他社の怪獣映画は本作しか公開されませんでした
怪獣映画代理戦争を大映のガメラは勝ち抜いたのです
しかし怪獣映画ブームは去りつつありました
怪獣ならテレビでウルトラセブンが1967年の10月から放映がスタートしていました
映画よりクォリティーの高いものがただで観れるのです
劇場に足を運んでくれる観客がどんどん減っていたのです
子供向けのクォリティーのダウンから大人は観なくなり、観客は子供中心となり、一層の低年齢化が進行していたのです
また同年1月からテレビ放映が始まり大人気になったゲゲゲの鬼太郎がもたらした妖怪ブームに人気が移りつつ有りました
本作と併映であった妖怪百物語もガメラと人気を二分するほどの予想以上の人気を獲得しました
本作の内容も大変なクォリティーダウンです
なにしろ大映の経営危機で本作にかける予算は前作ガメラ対ギャオスの三分の一になったのだそうです
ですから回想シーンとして過去3作のダイジェストを長々挿入するし、ガメラのダムや東京の破壊シーンは過去の映像の使い回しになっておりガッカリです
それでも本作は大ヒットしました
観てると面白いのです
湯浅監督の手腕は凄いです
子供達の喜ぶツボを押さえてあるのです
大人も子供向けと思って観れば耐えられるのです
冒頭の景気の良いガメラマーチはとにかく素敵です!
敵の宇宙船のデザイン、内部インテリアのデザイン性は垢抜けたもので大変にスタイリッシュでレベルが高いです
予算をかけて質感や照明のクォリティーをあげたなら素晴らしいものになったとおもいます
宇宙の三角柱状のシステムモジュールの入れ替えシーンも、そのシンプルさが未来のテクノロジーを感じさせるものでセンスがあります
2001年宇宙の旅の公開は本作の1ヵ月後ですが、ボーマン船長がHAL9000の透明の光素子ボードを抜くシーンを思わせます
バイラス星人の造形も素晴らしいです
ガメラとの戦いも斬新です
とくにガメラの腹がバイラスに深く何度も突き刺されるシーンは子供達には刺激が強すぎると思う程です
人間になりすましていた連中の頭が次々にとばされるシーンも刺激が強すぎると思います
今ならレーイティングが子供向けに出来ないと思います
それだけに当時の子供達には衝撃的なシーンで、それをものともせずに勝つガメラの強さと勝利のカタルシスが得られたのです
大人も防衛隊の司令部で国連安保理からの通達を受けるシーンで衝撃を受けると思います
人質に捕られた子供二人の命には代えられない
地球は降伏するというのです
もうビックリです
腰を抜かします
しかしこれ子供の怪獣映画だからでしょうか?
本作の9年後の1977年ハイジャック事件が海外で発生した時のことです
時の総理は「一人の生命は地球より重い」と述べて、身代金を支払い、「超法規的措置」として、刑務所に入っていた赤軍派のメンバーを釈放し、海外に逃亡させたのです
似てると思いませんか?