「エゴが招きエゴが追放した怪獣」大怪獣ガメラ 因果さんの映画レビュー(感想・評価)
エゴが招きエゴが追放した怪獣
平成ガメラがそんなに面白くなかったからそもそもそんなに期待してなかったけど、ガメラのビジュアル以外特筆すべき点がほとんど見当たらない作品だった。50年代くらいの作品だろうとタカを括っていたのに65年製だというから驚きだ。ミニチュアセットを用いた特撮シーンはそこそこの出来だが、それ以外のシーンでは製作予算的な問題があられもなく露呈してしまっている。ただ、やはりガメラの凡庸なようでいて唯一無二なビジュアルとそこからくる存在感の強さは見ものだ。頭と四肢を殻の中に引っ込めて火を噴射させ、回転花火の要領で空高く舞い上がるガメラの姿は一度見たら忘れられない。飛行形態の美しさという点ではライバル社東映のゴジラをゆうに凌ぐ。まあ、ゴジラの飛び方があまりにも酷すぎるからなんだけども(『ゴジラVSヘドラ』参照)。原爆の惨禍から生まれたという出自や人間のエゴイズムによって忌避され退治されるという顛末は戦後スペクタクル映画の王道を征く怪獣だが、それにしても火星に追放とはあんまりにも気の毒だ。初代ゴジラとは違って人間に対する良心があるような描写があるにもかかわらず人間たちから容赦なく攻撃を受け続けるガメラに思わず肩入れしたくなってしまう。ちなみに第2作ではガメラを閉じ込め火星へ向かうロケットが隕石と衝突し、逃げ出したガメラが再び地球に戻ってくるところから物語が始まるそうだ。『エイリアン』シリーズかよ。
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