劇場公開日 1970年10月24日

家族のレビュー・感想・評価

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4.5隠れた名作。きっと永遠に隠れた名作になるであろう。

2024年11月14日
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1970年の日本。
貧乏からの脱出、新天地に夢を抱き
長崎から北海道まで家族と移動する話。

俳優の演技部分以外
ほぼドキュメンタリー的に撮影
当時の日本の人々の姿を残した。

この映画を作る努力も凄いが
前田吟さんのあるシーンに感銘を受けた。
ジブリの鈴木敏夫さんもその部分に注目。
旅の途中、父(笠智衆)の言葉に反応した
福山市在住の末息子(前田吟)の一瞬の反応、
その表情に演技を超えるものを感じた。
音楽の入り方も良いが、やはり演技。演出。
父の言葉、見送る末息子の顔、離れる列車、
車で会社(工場)へ向かう、涙を拭う、
空撮、小さく映る車、工場地帯。
この場面は、どんな賞を手にした俳優をも凌ぐ
心に残る最高の場面だと、個人的には思っている。

長旅で極限状態にあった家族
東京に着く頃に大きな出来事が…

その出来事の中心人物、
いつも明るく振る舞っていた妻の
少しずつ垢抜けてゆく化粧。
妻であり母の(賠償千恵子)の姿
旅と共に変化する彼女の心の有り様
絶望に崩れ落ちる姿と、その後…。

旅の終わりに見せていた父の笑顔。
それで終わらない、これで良かったのか?
旅をして良かったのか、家族に問う。

山田洋次監督の映画に触れていつも感じる
日本の姿を残してくれた事への感謝。

どの家族にも有る喜びと悲しみ。
間違いなく隠れた名作。
知っていて良かった映画。

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星組

4.0新しい大地を求めて旅ゆく人々‼️

2024年4月14日
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泣ける

楽しい

幸せ

長崎県の小さな島から北海道へ旅する一家を描いたロード・ムービーですね‼️その家族の道中を通して、長崎県の貧しい孤島暮らし、次々と発展する大工業地帯、大都会の過密な交通状況と公害、過疎化が進む開拓地など、当時の日本の社会問題が浮き彫りになる構成‼️貧しい者が新天地を目指すロード・ムービーと言えば山田洋次監督らしいと思いますが、途中大阪万博を見物しようとして大混雑でダメだったり、娘を一人死なせたり、北海道に到着して祖父が亡くなったりと、山田洋次作品というよりは、ジョン・フォード監督の「怒りの葡萄」のような厳しさに満ちた作品だと思います‼️役者さんたちのアドリブ満載の演技やドキュメンタリーのような作風もイイんですけど、私はやっぱり「黄色いハンカチ」や「遥かなる山の呼び声」のようなドラマチックな作品の方が好きですね‼️

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活動写真愛好家

4.0貧乏はつらいよ

2022年6月26日
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長崎から北海道を結ぶ3000キロの動線。僻地から僻地という不毛な大移動に、幾度となく後悔の波が押し寄せる。しかし高度経済成長という物語にいったん乗り遅れてしまった者たちにとって、もはや都会にはいかなる居場所も残されていない。動線上に現れる絢爛豪華な街々は、貧しい家族たちにとっては蜃気楼に等しい。

上野にある饅頭屋の店員からタダで饅頭を貰ってきた孫に、笠智衆が「ワシらは乞食じゃなか」と金を払うよう叱責するシーンが見ていてかなりつらかった。こうしたささやかな美徳や倫理も、東京という巨大なレンジから見れば「貧乏」の一言で括れてしまう。

というか、そもそも「北海道の未開拓地で一旗揚げる」という井川比佐志の野望からして時代遅れも甚だしい。彼らを止めることができたのは井川の弟夫婦だけだったと思う。しかしどうにか高度経済成長の恩恵にあずかることができている彼らにとって、井川一家は足手まといに他ならない。そういうわけでやはり井川一家は地の果ての凍土に向かわざるを得なかった。

とにかく倍賞千恵子が不憫でならない。『男はつらいよ』の比じゃない。ただただ自虐的に、自己破壊的に北海道へ向かおうとする井川とは異なり、倍賞はそこに軸足を定め、家族とともに生活を送っていこうという現実的な覚悟を背負っている。酒や権威や自己憐憫に縋りつくことなく、常に家族を精神的な面で支えていたのは間違いなく彼女だ。そして彼女だけが誰からも支えられることのないまま生きている。それでも毅然と前を向く倍賞の微笑みには、可憐さや美麗さを超越した力強さが湛えられている。本当にすごい女優だと思う。

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因果

4.0倍賞千恵子

2021年12月19日
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鑑賞方法:DVD/BD

泣ける

幸せ

美しい、たくましい

とても素敵です

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昔から映画好き

4.0倍賞千恵子の美しさ。

2021年5月20日
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再見。力作。
経済成長で狂う列島を一家族の目で移動定点観測する迫力の画。
歴史資料的価値。
暴力的な工場群、人波とスモッグに煙る都市、そして辿り着く北の大地。
猥雑騒然とした全編と一人対峙して負けない倍賞千恵子の涼やかな美しさと底抜けの逞しさ。
山田洋次、38歳か。

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きねまっきい

5.0高度成長期が真っ正面からテーマに据えられています

2020年1月14日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

昭和45年、1970年
高度成長期を駆け上がり大阪で万博が開催された年
復興を成し遂げ繁栄を謳歌している時代
とはいえ日本人全部が全部繁栄の恩恵に恵まれている訳ではありません

工業化の進展はエネルギー源の転換を促します
エネルギー源の主役は石炭から石油に変わり、長崎の離島の海底炭坑は倒産し、そこの炭坑夫は職を失います
彼は家族を抱えているのです
三歳の男児、まだ赤ちゃんの女児、年老いた父
そして妻

長崎の離島の失業した炭坑夫
つまり彼は日本の高度成長から取り残されて、こぼれ落ちた人間です

弟は島をでて福山の石油コンビナートで働いています
小さな建売住宅を20年ローンで、小型車も月賦でかっています
つまり、弟は産業構造の転換の波に乗り高度成長の恩恵をうけつつある人間を代表しています

そして友人の亮太は北海道で開拓農民をしています
つまり彼は独立独歩で高度成長の局外に立っている人間の代表です

家族は高度成長に沸く、日本列島を縦断して北海道に向かう途中、福山と大阪に寄ります

老いた父は福山の次男を頼ろうと来たのですが、高度成長の波に飲み込まれないようにするだけで弟家族は精一杯であることに気付かされて諦めます
見送りのあと、申し訳無く泣きながら運転する次男の車は日本の高度成長を推進している巨大な石油コンビナートの中に入って走って行くのです

福山は、尾道の隣町です
つまり本作は小津安二郎監督の東京物語のオマージュでもあるのだと思います
子供から邪険にされて、尾道の田舎に帰る老いた父母の物語が本作に投影されています
本作では、その役を演じた同じ笠智衆が東京物語では帰る土地だったところからも追い払われてしまうのです
東京物語の逆であり、同じでもあります
更に現代化して人情や家族の絆もこのように一層希薄化したということなのです
本作では福山は安住の地ではなく、最果ての地まで父を追いやっているのです

そして大阪では、高度成長の繁栄そのものを象徴する万博の正に入口だけを一目見るだけなのです
大阪梅田と万博会場は人出で溢れ、家族は疎外感を味わうのです

福山と大阪、高度成長は彼ら家族には関係の無いことだったのです
入口にも入れなかったのです
結局、彼ら家族は高度成長期の局外にある辺境の地を目指すほかなかったのです

緑の春の陽光溢れる長崎から、まだ雪が多く残る北海道への風景の変化は、まだ高度成長の及ばない土地に向かっていることを明示します

北海道に入った函館の町の光景は、大阪梅田の地下街とは全く異なり、戦後すぐのような高度成長期以前の街並みのままです
ここは高度成長がまだ及んでいない土地であると端的に映像で語らせています

そして高度成長からこぼれ落ちて、そこから逃げる者にはしわ寄せが容赦なく押し寄せてきます
赤ちゃんと老人という弱い者から犠牲になるのです

しかし父であり母であるからには、残った子供を守り、家族であり続けないとならないのです
くじけているどころではないのです
後悔していても始まらないのです

いや、違う
家族がいるからこそ、力が湧き頑張れるのです

クライマックスは雪も消え緑の草原、明るい陽光が溢れる北海道中標津の草原です
北の最果ての地であっても、遅くなっても春はくるのです
長崎の春の光景よりも明るく広く美しいのです
新しい生命も生まれ家族はまた成長していくのです
この家族の高度成長はここから始まるのです

根釧台地の大平原
独身の頃、仕事ばかりの日常に煮詰まって、何の予定もない夏期休暇の初日に急に思いたって空港に行き北海道に飛びました
札幌から鉄道を乗り継いで到着した、その根釧台地の遥かな、どこまでも続く地平線を見たとき、都会での悩み事のなんと小さいことかに気付かされました
そんなことをひさびさに思い出しました

記憶
劇中、登場人物達の様々な過去の記憶のフラッシュバックが挿入されます
夫婦の馴れ初め、兄弟が幼かった頃の逞しい父の姿
赤ちゃんが産まれた喜び
記憶の積み重ねが家族を、家族たらしめているのです

そして21世紀、本作から半世紀も経ちました
結婚すらしない、だから自分の家族も持っていない男女も普通にいる世の中です

ならば記憶に残るスペシャルな思い出も無いのでしょうか?

遥か北の果てで見た地平線しかスペシャルな思い出が無いままなのなら、その人生は雪に覆われて凍てついた未開拓なままの大地なのでは無いのでしょうか?

倍賞千恵子の名演技は本当に心を打たれました

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あき240

4.070年代ロードムービーの傑作

2019年3月3日
PCから投稿

長崎から北海道まで、西から東への本格ロードムービー。変わりゆく景色を見ているだけでも、画面に吸い込まれそうになる。観るのは二度目。所々忘れていた。早苗が死んだことは覚えていたが…。大阪駅前、昔はあんな感じだったなあ。とにかく1970年の空気の熱さが、景色から熱く感じられるのです。そして倍賞千恵子のなんと美しいことよ。

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まこべえ

3.5長崎の小島から北海道の開拓地を目指す家族のロードムービー。 福山で...

2018年4月10日
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鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

長崎の小島から北海道の開拓地を目指す家族のロードムービー。
福山で弟と会い、大阪で万博に迷い、東京で大事件勃発。物語は以降沈鬱なムードへ。
出演は男はつらいよの番外編が如し。渥美清の登場も救いにはならず。絶対家族崩壊かと思ったのだが…
ピチピチの倍賞千恵子のみが救い。役名の民子で三部作になってるらしい、知らなかった。
評価は高いようですが、私的には三部作最終「遥かなる山の呼び声」には遠く及ばぬ一本であった。

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はむひろみ

4.0希望

2018年3月26日
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今よりももっと身近に死があり
今よりももっと身近に生があったのだな
もう50年も前の映画なのですね
そして自分の歳を思うと愕然とする(笑)
助け合い励まし合い悲しみや苦しみ辛さは分け合い忘れず引きずらず笑って日々を過ごせたのなら それが家族なのかな

昨夜、寝床に入りぼんやりとこんなことを考えていました
「あの映画のあの人はもういない、じゃあの映画のあの人は?
あれ、この映画のこの人も おいおい待てよちょっと待ってくれもういない人ばかりじゃないか
いやいや参ったな〜〜」 何てね

そんなこと考えたら少し寂しくもありますがこれは仕方がないこと、まだクリント・イーストウッドか現役でバリバリです!
彼の作品でテロ事件の映画がありますがこれになんと素人を主人公に撮ってましたね
山田さんの映画も地元の素人さんがよく出てきます、役者の方と馴染まれていてまるでドキュメンタリーのようでとてもリアルに感じます。

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カルヴェロ

4.0山田洋次監督で胸を打つ・・

2016年11月14日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

泣ける

山田洋次監督の作品。途中で涙が出た。赤ちゃんが亡くなった場面かな・・1970年当時は高度経済成長時代。大阪万博博覧会も開催されていた。もはや戦後ではないが、国民は皆貧しかった。1970年の松竹映画。

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亮一君