劇場公開日 1960年12月11日

「情炎の如く」ガス人間第一号 近大さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0情炎の如く

2017年6月26日
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鑑賞方法:DVD/BD

泣ける

悲しい

興奮

東宝特撮1960年の作品。
変身人間シリーズ第3弾で、最高作。

連続銀行ギャング事件が発生、警察は犯人を追うが、逃げられてしまう。
乗り捨てられた犯人の車の近くに、日本舞踊家元・藤千代の家が。
不審に感じた岡本警部補は彼女をマーク、やがて犯人との接点と思われる証拠も見つかり、彼女を逮捕。
そこへ、水野という男が真犯人と名乗り出る。彼は、肉体をガス化出来る“ガス人間”だった…!

先駆的な「透明人間」、同シリーズの「美女と液体人間」「電送人間」と凝った特撮や映像表現を見せてくれるが、この“ガス人間”は他の追随を許さない。
CG無き時代、“ガス人間”をどう演出するか。
本物のガス、ドライアイス、作画、合成、ゴム人形などあらゆる方法を駆使して表現。
円谷英二は本当に、映画界きってのアイデアマン、それを形にするエンターテイナーだ。

本作初見はもう十何年も前。
それでも結構印象深く覚えていた。
とてもとても特撮映画とは思えないアダルトな雰囲気。
本作はガス人間・水野の悲劇であり、藤千代との悲恋である。

あるマッドサイエンティストの生体実験でガス人間になった水野。
水野の人生は日陰の人生。パイロットの夢破れ、図書館員として黙々と勤め、挙げ句の果てに騙されガス人間に。
そんな中出会った藤千代。
水野の一方的な偏愛だが、彼にとって何物にも変え難い存在。
日本舞踊の名家でありながら今は落ちぶれた彼女の為に銀行を襲撃。
全ては彼女の為に。彼女を再び、舞台で踊らせる為に。

「地球防衛軍」のミステリアン、「怪獣大戦争」のX星人統制官など東宝特撮で印象的な役を演じてきた土屋嘉男にとってガス人間は最大の当たり役。
その後海外からも土屋氏主演での続編の話が企画されたほど。
残念ながらその話は消滅してしまったが、是非見てみたかったものだ。
三橋達也、八千草薫の出演も東宝特撮異色のキャスティング。
若き日の八千草薫の美しさ、日本舞踊を披露するシーンは必見モノ。

かくして藤千代の舞台は開かれ、客席で水野は満足そうにそれを見つめる。
警察は燃焼ガスを用いて水野の息の根を止めようとするが、アクシデントが。
水野と藤千代の悲恋の末路。
情炎とでも言うべき、荘厳ですらあった。

近大