「軍国少年の系譜」海底軍艦 あんちゃんさんの映画レビュー(感想・評価)
軍国少年の系譜
1963年の作品である。本多猪四郎、円谷英二の監督コンビであり、海底軍艦そのものとか、轟天号のドッグのある南洋の島であるとか、ムウ帝国の宮殿であるとか、当時の子供たちの想像にドンピシャな映像が続きワクワクさせてくれた。役者についても楠見少将を演ずるのが上原謙だったり、工作員23号を演ずるのが平田昭彦だったり、防衛庁(当時はまだ省ではない)幹部としてコソッと藤田進が出演していたりしていて実に贅沢である。子供向けということではなく大人が大人に観せる映画をつくっている感じがする。
おそらくは終戦前まで軍国少年であった顧客層をも引きつけていたのだろう。この当時で30歳を少し超えているぐらいの。
昭和20年に終わった戦争では確かに日本は敗れた。でもそれは戦争指導者たちの無能と、資源不足によるものであって、科学力においては完全に遅れをとったわけではなかった。日本には世界に冠たる兵器開発力や、技術力、兵器操縦力があり、それらは軍の後継組織や民間に移植され脈々と生き残っている。だからアメリカに再び勝つことはできないかもしれないが、異星人や地底人、海底人、怪獣などが侵略してきたときは隠された新兵器や改良された旧軍兵器を使って日本人は立ち上がり、世界の勝利に貢献することができる。
これがこの映画の基本思想であり、実に「ゴジラ-1.0」に至るまで引き継がれているコンセプトである。そしてそれは戦時中の少年たち(一部少女たちも)か信じていた神州不滅の思想が置き換わったものだといえる。
この映画は清々しいほどそのコンセプトを素直に主張しており、現代の作品のように各方面への配慮をしていないところがとても良い。
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