女の歴史のレビュー・感想・評価
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私達に必要なのはこういう話、「勇ましい」話じゃない
この映画は「女の歴史」でなくて、大文字の歴史には現れない、小文字の、でも圧倒的大多数の人間の歴史なんだと私は思った。
花嫁姿から、何人も雇う美容院経営者、孫までいる年齢までを自然に変化し演じる高峰秀子が素晴らしかった。辛いこと悔しいこと悲しいことも沢山描かれる。一方で、モンペなんて嫌だね!と基本的に着物で通し、お酒が好きで、日本は負けるね、負けるわけだよとずっと言って、小唄が上手い姑役の賀原夏子の存在が温かく私達をいつでも笑わせてくれる。二人の演技とやりとりがリアルで本音でかわいらしくもあり、とてもよかった。回想形式も新鮮だった。
仲代達矢は珍しく純情で心根の優しい誠実な役だった。山崎努の美しいこと!彼の同僚で児玉清が出ていたはずだがわからず残念。木場とか自由が丘とか田原町など馴染みのある地名を聞いて嬉しかった。脇役がみんなゴージャスで芸達者でそれだけで幸せになった。
おまけ
「妻」の高峰三枝子も今作の賀原夏子も同じ女学校出身。タイプは全く異なる女優だが上手くて演技幅の広さは共通している。
戦争を生き延びることは子を産み育てることである。
1963年。成瀬巳喜男監督。美容院を経営する女性主人公は義理の母とサラリーマンの息子の3人暮らし。息子の結婚を考えるようになるが、息子は息子でキャバレーの女と結婚するという。これまでの子育ての苦労を思い出す主人公は戦前の自身の結婚から夫の出征と戦死、戦後の苦労とそれを支えてくれた夫の親友への甘い想いを次々に想起する。現実では、息子にある出来事が起こって、、、という話。
女たちが戦争を生き延びることと子供を産み育てることがパラレルに描かれる。歴史とは生み育てる女たちのつながりである。まさに女性映画。
戦後の人込みを表現する大勢のふらふら動いている人々と坂のある街、広場、飲食店などのセットがすばらしい。そして、結ばれない仲代達也と高峰秀子。高峰秀子主演の映画を通して戦争を考えてきた当時の観客は、仲代達也がでてくるだけで「決して結ばれない二人」と直感したのではないか。そのくらいこの二人は結ばれない。
夫の浮気
やり手の自動車セールスマンである息子・功平に食事に誘われ、結婚したい女がいると打ち明けられた清水信子。相手の女性はキャバレーに勤めるみどり(星由里子)。信子はキャバレーと聞いただけで拒否反応を示す。反対されたので、家を出ていくという功平。母は「好きだったらいいじゃない」と言い、日中戦争時代の過去を思い出す。しかし、そんな折、交通事故で功平は死亡する・・・
悲惨なことばかりの人生。日中戦争の昭和13年に功平は生まれるが、その時代にも清水の材木問屋は破産。そのちょっと前も、夫・幸一(宝田)の父親が芸者と無理心中したばかり。やがて辛い太平洋戦争も終わるが、疎開先で夫は戦死したとの報せを受け取った信子であった。義理の母と暮らし、闇米を売る生活をしていたが、息子・功平が肺炎となり闇のペニシリンを手に入れる。その薬を世話してくれたのが夫の元カノ・・・。そんな辛い中でも夫の友人である秋本は親身になってくれたのだ。
功平が事故死したことで義理の母とも縁が切れてしまうことになったが、突如、功平と籍を入れていたみどりが訪ねてくる。「子どもができた」と教えられ、いきなり「堕ろして」と怒り出す信子だった。思い直して、みどりの家へ直行。病院へ行ったという隣人の話を聞いて、焦る信子。自分の孫が死んでしまう・・・と、緊迫感も短く、みどりは産む決意をしていたのだ。
あっけない幕切れだったけど、よくよく考えてみると、三代続いた夫の浮気や、やりたいことをやって死んでしまう男たちの系譜。まぁ、そのおかげで戦争というものも単なる死の原因としてしか扱われていないことが残念。やはり高峰秀子を楽しむだけの映画であった。義理の母を演じた賀原夏子もコミカルな雰囲気を出していてgood。
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