劇場公開日 1957年11月15日

女殺し油地獄(1957)のレビュー・感想・評価

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3.0人形浄瑠璃とも歌舞伎とも違う

2024年4月8日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

笑える

萌える

理性というか頭で理解して納得して欲しいという思いが入ってる脚本で演出だった。いつの時代にもいる金持ちのボンボンのええかっこしいの金食い虫のダメ息子の話ではあるが、古典にのっけると納得も理解も不要で見るだけで面白い、それが不思議だ。そして上方が舞台だから映画でも太棹三味線と大阪弁は外せない。

豊島屋(てしまや)の土間、暗闇の中で与兵衛とお吉がもみ合って思わずの血、それからままよ、と油まみれ血まみれになって滑ってひっくり返って油まみれ髪も乱れてという凄惨な場面が歌舞伎と文楽ではワクワクする。でもこの映画ではあっさりで修羅場ではなかった。与兵衛が彼女に不義の仲になってくれという台詞もなかったし、暗い中で刀を振り回してお吉に当たって血が出て大騒ぎになって最初は自分もびっくりしてお吉に謝る与兵衛が、キッと目つきが変わって・・・という流れもなくて残念だった。でもそれを求めるなら舞台で見ればいいのだろう。

与兵衛の父親役の鴈治郎の芝居は素晴らしかった。先代の恩を忘れず生さぬ仲の息子を心配する気持ちはもう心からのものだった。大阪の人が上方の芝居やるのは本当にいいなあと思った。等身大の人間が演じているからこそだろう。(当時の)扇雀(藤十郎)が上方らしい明るく軽妙な雰囲気で綺麗な顔してた。親子(鴈治郎と扇雀)とも目が少しつり上がって如何にも上方の成駒屋の顔だった。それから上方落語の神様、桂米朝が出ていたのはびっくり!とても嬉しかった。香川京子さん演じる妹おちか、兄思いでキツネつきの振りもかわいらしかった。

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talisman

5.0与兵衛の闇

2020年7月10日
Androidアプリから投稿

近松門左衛門の作品で人形浄瑠璃で初演された

殺人直前の与兵衛(扇雀)が親心に触れ しんみりする(観客も)場面から
豊島屋の女房(新珠)に金を無心する展開
二人の思惑の違い、ズレが徐々に拡大してゆき殺人に…
このジェットコースターのように上下する感情の動きが面白かった

この見せ場のピークが〈油屋の殺人〉で
樽を倒しながら 逃げる女房を追いかける与兵衛という場面になり
浄瑠璃、歌舞伎では面白味もあるが、映画だと陰惨さだけになる

扇雀(4代目坂田藤十郎)が抜群に上手く、顔も浄瑠璃の人形のようでもあり、上方歌舞伎の大看板であることを伺わせる

その瞳が空虚さも感じさせ、市中引廻しの姿に観客は〈本当に反省したのだろうか…〉と考えてしまう
ここがこの作品の一番怖い処だった

脇を固める面々も豪華で、これは物語の内容とは別に楽しめました

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jarinkochie