劇場公開日 1957年11月15日

女殺し油地獄(1957)のレビュー・感想・評価

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3.0親子の情、すれ違いに絞った脚本・演出。

2026年1月26日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

悲しい

単純

知的

人形浄瑠璃として、江戸時代に初演。歌舞伎舞台にもなり、映画化も何回もされている近松門左衛門の演目。
 あれ?こんなんだったけ?微妙に違う気がするが、人形浄瑠璃も、人気がある有名な段だけ演じることが多いから、歌舞伎も通し狂言でみたことがなく、私の記憶違い?

亡くなる直前は坂田藤十郎になった、当時中村扇雀さん(当代鴈治郎さん扇雀さん兄弟のお父様)が、与兵衛を演じる。

その実父・鴈治郎さんが、与兵衛の継父を演じる。

鴈治郎さん・扇雀さん親子で演じる『曽根崎心中』がお二人の当たり役(鴈治郎さん=徳兵衛、扇雀さん=お初)だったので、一瞬、扇雀さんがお吉かと思ってしまった…。歌舞伎ではないから、男は男が演じ、女は女が演じる。

お金の単位が今一つわからず、数字だけを聞いていると「足りているんじゃ?」と思ってしまうのが、与兵衛の切羽詰まった気持ちへの共感を妨げて…。また、契約書類詐称のところが、今一つわかりづらく、かつ、それと借金で、「縛り首(死刑)」となるところも、現代ではピンとこないので、そこも、切羽詰まった気持ちに共感し難く…。たんなる短絡かつ自己中の思考に見えるから…。

舞台では、「油地獄」を際立たせるような観客受けする演出があるが、この映画では、そこは写実に描く。夜、明かりも消えた、闇の室内での犯行。今一つ、何がどうなってが判別しづらく…。

しかも、そこからの与兵衛の言動…。
教科書的なオチにまとめたかったのかなあ?
う~ん。

それでも、なんとか兄のためになろうとしたおちかがかわいらしく。

年の離れた従姉のようなお吉が、本来なら家族に囲まれた幸せの中で暮らしていくはずだったのにと切なく、

継父となった経緯から、与兵衛に強く出られない父の、それでも与兵衛を大切に思う気持ちと、お店を何が何でも守らなくてはならないという親戚筋からの要望との板挟み、妻への思いがひしひしと…。

わがままに育ててしまった後悔と、それでも、かわいいと思う実母の想い。

実母がお金を落としてしまった瞬間の、実母・継父・お吉。
もうこれだけでも、お腹いっぱい。必見シーンです。

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とみいじょん

4.0脚本は橋本忍ですが、大きな改変や脚色は見られず、普通に映画化されています

2025年6月13日
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鑑賞方法:VOD

女殺し油の地獄
1957年11月15日公開、東宝 カラー作品
ご存知、近松門左衛門の1721年初演の人形浄瑠璃が原作です

河内屋与兵衛
二代目中村扇雀与兵衛
シッカリとダメ男を演じてくれます
目の色の演技が良かったです

徳兵衛
二代目中村鴈治郎
さすが、そのものになりきってます
妻のさわが豊島屋に現れて金を落としたのを見つけてからの演技は見ものです

お吉
新珠三千代
お歯黒をして出演しています
まだ27歳なので、できるかぎり年増の人妻に見えるようにしています
いい女感は出しても性的なものを感じさせるようには一切撮られていません

脚本は橋本忍ですが、大きな改変や脚色は見られず、普通に映画化されています

与兵衛の市中引き回しのシーンから始まります
千日前屠場とは、ビッグカメラが今建っているところだそうです

初段 野崎参り
屋形船は大阪城の北にある八軒屋浜から寝屋川を遡り徳庵から住道を経由して、現在のJR野崎駅の南の観音浜まで運行されていたそうです
屋形船での初夏の行楽の楽しさが映画化のメリットとしてしっかりと写されます
その後は
二段河内屋、三段豊島屋と普通に続きます
殺害シーンはもっと映画らしい演出がされるものと期待したのですが、さほどのことは無くすこしガッカリです
ネズミの一件はなく、与兵衛が自首したことになっています
インチキ祈祷師が胡散臭い味をだしていて面白いです

大阪弁が早口で応酬されます
全員ネイティブなので興醒めするような言葉遣いはありません

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あき240

3.0人形浄瑠璃とも歌舞伎とも違う

2024年4月8日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

笑える

理性というか頭で理解して納得して欲しいという思いが入ってる脚本で演出だった。いつの時代にもいる金持ちのボンボンのええかっこしいの金食い虫のダメ息子の話ではあるが、古典にのっけると納得も理解も不要で見るだけで面白い、それが不思議だ。そして上方が舞台だから映画でも太棹三味線と大阪弁は外せない。

豊島屋(てしまや)の土間、暗闇の中で与兵衛とお吉がもみ合って思わずの血、それからままよ、と油まみれ血まみれになって滑ってひっくり返って油まみれ髪も乱れてという凄惨な場面が歌舞伎と文楽ではワクワクする。でもこの映画ではあっさりで修羅場ではなかった。与兵衛が彼女に不義の仲になってくれという台詞もなかったし、暗い中で刀を振り回してお吉に当たって血が出て大騒ぎになって最初は自分もびっくりしてお吉に謝る与兵衛が、キッと目つきが変わって・・・という流れもなくて残念だった。でもそれを求めるなら舞台で見ればいいのだろう。

与兵衛の父親役の鴈治郎の芝居は素晴らしかった。先代の恩を忘れず生さぬ仲の息子を心配する気持ちはもう心からのものだった。大阪の人が上方の芝居やるのは本当にいいなあと思った。等身大の人間が演じているからこそだろう。(当時の)扇雀(藤十郎)が上方らしい明るく軽妙な雰囲気で綺麗な顔してた。親子(鴈治郎と扇雀)とも目が少しつり上がって如何にも上方の成駒屋の顔だった。それから上方落語の神様、桂米朝が出ていたのはびっくり!とても嬉しかった。香川京子さん演じる妹おちか、兄思いでキツネつきの振りもかわいらしかった。

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talisman

5.0与兵衛の闇

2020年7月10日
Androidアプリから投稿

近松門左衛門の作品で人形浄瑠璃で初演された

殺人直前の与兵衛(扇雀)が親心に触れ しんみりする(観客も)場面から
豊島屋の女房(新珠)に金を無心する展開
二人の思惑の違い、ズレが徐々に拡大してゆき殺人に…
このジェットコースターのように上下する感情の動きが面白かった

この見せ場のピークが〈油屋の殺人〉で
樽を倒しながら 逃げる女房を追いかける与兵衛という場面になり
浄瑠璃、歌舞伎では面白味もあるが、映画だと陰惨さだけになる

扇雀(4代目坂田藤十郎)が抜群に上手く、顔も浄瑠璃の人形のようでもあり、上方歌舞伎の大看板であることを伺わせる

その瞳が空虚さも感じさせ、市中引廻しの姿に観客は〈本当に反省したのだろうか…〉と考えてしまう
ここがこの作品の一番怖い処だった

脇を固める面々も豪華で、これは物語の内容とは別に楽しめました

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jarinkochie
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