「人は無様に美しい恋をする」男はつらいよ 寅次郎の告白 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
人は無様に美しい恋をする
シリーズ44作目。
泉が就職の面接を受ける為、名古屋から上京してきた。満男は両親に挨拶したりして、朝から上機嫌。
ちょうど寅さんも帰って来る。(帰って来て早々、くるまやの店員・三瓶ちゃんに商売のさくらをやらせようとして、皆に呆れさせられる)
皆が集った夕食。いつも独りで寂しく夕食を取っている泉にとっては、本当に温かく楽しいひと時。
翌日、満男も付き添って就職の面接へ。学生時代の音楽の先生からの紹介の楽器店であったのだが…、
泉の度々の転校。その原因である両親の離婚。母親の水商売。…
泉自体は何も悪くないのに、複雑な家庭事情や偏見が…。
何の力にもなってやれない満男は、自分の無力さを痛感する。
泉は気落ちしたまま名古屋へ帰る。
追い討ちを掛けるかのように、母・礼子が今付き合ってる男性と再婚したいと言い出す。
母の幸せを思えば悪い話ではないのだが(相手の男性もいい人そう)、まだ若い女の子にこれら全ては抱えきれない事ばかり。
突然、泉は家出する…。
泉は鳥取を一人旅。
偶然にもそこで、寅さんと再会。
また泉は鳥取から満男にハガキを出しており、心配した満男も鳥取へ。鳥取砂丘にて合流する。
満男と泉のラブストーリー第3章。
今回は、泉の薄幸のヒロイン像がよりクローズアップ。
確かに改めて振り返ると、泉の背景は決して幸せとは言えない。
でも親身になってくれる優しいおじちゃまやすぐさま駆け付けてくれる先輩が居て、境遇は不幸かもしれないが、周りの人たちとの交流や繋がりは決してそうではない。
寧ろ、母の再婚も素直に祝福出来ず、勝手に自分で不幸になっていたのかもしれない。
後半は久々に寅さんの恋。
鳥取の寅さんの昔馴染みの料亭に泊まる事に。
そこの女将・聖子に寅さんはかつて惚れていたが、二枚目の板前に取られてしまった。
幸せにやっていると思いきや、亭主とは死別。しかも、浮気者だった…!
酒に酔った聖子は寅さんに色っぽく言い寄って来るが…。
マドンナ・吉田日出子がとろんとした雰囲気で、寅さんと束の間の大人の恋を演じる。
またまたまたの兄の失恋を、いい歳して…と、嘆くさくら。
でも、今恋をしている満男の気持ちはちょっと違う。
恋は美しいのに、その恋をしている人は、どうしてこうも無様。
が、寅さんは常に相手を思いやり、満男も泉の為なら必死になれる。
一生懸命なその姿を笑えない。
寅さんも満男も我々も、皆同じ。