「【”風の吹くまま。”今作は、京都・鎌倉が舞台であるからか、マドンナがいしだあゆみさんであるからか、シリーズの中では際立って情緒溢れる逸品なのである。】」男はつらいよ 寅次郎あじさいの恋 NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)
【”風の吹くまま。”今作は、京都・鎌倉が舞台であるからか、マドンナがいしだあゆみさんであるからか、シリーズの中では際立って情緒溢れる逸品なのである。】
■今作は、序盤の舞台の昭和の京都の街並みが映し出されているのが、嬉しい。
マドンナかがりを演じたいしだあゆみさんが、人間国宝の陶芸家・加納作次郎(片岡仁左衛門)の家で働いている所に、作次郎の下駄の鼻緒を直してあげた寅さんが招かれるのだが、最初は寅さんはかがりには、余り興味を持たない所が、今までと少し違うかな。
かがりが、密かに想いを寄せていた作次郎の且つての弟子(津嘉山正種:前作までオープニングで、色んな役で江戸川のシーンに出ていたが、メデタク昇格。)が、結婚する報告を受け、何故か、かがりを激しく叱責するのである。
ー この辺りのいしだあゆみさんの陰のある控えな美しさは、今までの作品にない位であると思う。特に寅さんに自部屋を与えて、夜その部屋に娘のランドセルを取りに来て、寝たふりをしている寅さんの枕もとの灯りをそっと消すシーンなど、寅さんでなくともドキドキする。ー
そして、かがりは故郷の丹後に戻るのだが、”風の吹くまま”の旅をする寅さんは、作次郎から名器の茶碗を貰い、願いを聞き、丹後でかがりと出会い、失意の彼女を笑わせるうちに、恋心を抱くのである。
とらやに戻った寅さんはいつもの如く、恋わずらいで寝込むが、そこにかがりが東京の友達と訪ねて来る所から、通常の寅さんに戻るかと思ったら、ナント、かがりは寅さんに、”鎌倉の紫陽花寺で、日曜日の一時に待っている”と言う手紙を貰ったところから、一騒動。
寅さんは、恥ずかしいのか満男を連れて、かがりと会う。
- この再会のデートシーンも、何ともジレッタイ。そして、寅さんはかがりから”旅先の寅さんとは違うのね。”と寂しげな笑顔で言われてしまうのである。
満男を演じる幼き吉岡秀隆さんの演技も良いのである。この方は、小さい頃から少し困った様な顔をしながら、喋る姿が良いのだなあ。-
<今作は、可笑しきシーンも多いのだが、京都・鎌倉が舞台であるからか、マドンナがいしだあゆみさんであるからか、シリーズの中では際立って情緒溢れる作品である。
名優、片岡仁左衛門が人間国宝の陶芸家である加納作次郎を演じているが、全く違和感なく役を演じている様や、作次郎の元で12年も修行している近藤を演じた若き柄本明さんのコミカルな姿も良い。
けれども、やはりいしだあゆみさんのどこか陰のある色っぽさにはヤラレル作品なのである。>