劇場公開日 1970年8月26日

「【渡世人の業を前半はしんみりと、後半は可笑しみを前面に出して描いた作品。男はつらいよシリーズは何でパターンがほぼ同じなのに、面白いのだろうか。今作はその理由は明確だと改めて思った逸品でもある。】」男はつらいよ 望郷篇 NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0【渡世人の業を前半はしんみりと、後半は可笑しみを前面に出して描いた作品。男はつらいよシリーズは何でパターンがほぼ同じなのに、面白いのだろうか。今作はその理由は明確だと改めて思った逸品でもある。】

2024年5月14日
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■寅次郎は昔世話になった北海道に住む親分から、旅館の女中に生ませた息子を捜してくれるように頼まれる。
 金をさくらから借り、北海道に行くもその親分に昔日の面影はなく、病院の大部屋で瀕死の状態であった。
 寅次郎は親分のD51の運転士になっていた息子に会うが、彼の”あんな人間にはなりたくないと幼い時に思った。”という言葉を聞いた寅次郎は、渡世人の業を思い知り、カタギになることを決意する。
 そして、浦安の豆腐屋で働き出し、そこの娘・節子(長山藍子)に心奪われる。

◆感想

・”男はつらいよシリーズ”が面白いのは、渥美清さんの可笑しみと時に哀しみを漂わせた演技と、寅さんの周囲にいるキャラクターの個性が立っている点と、山田洋次監督の人間性肯定の考えが作品の根本にきちんとあるからだと思う。

・今作でも寅さんは、世話になった親分の危篤の報を聞いて、わざわざ北海道まで行くし、親分の息子の”会わない”言い分も理解する。
 そして、自分も”額に汗して、油塗れになって働く。”決意をするのであるが、これを渥美清さんが演じると、可笑しみと哀しみのバランスが絶妙なのである。

・資料によると、今作はTVドラマ版でさくらを演じた長山藍子さんをマドンナに、博を演じた井川比佐志さん、おばちゃんを演じた杉山とく子さんを起用しているそうである。
ー 年齢的にTVドラマは知らないが、制作側が今作でシリーズ終了しようと考えていたとある。-

<しかし、これだけ人情味溢れる、笑えて且つ心に沁みる作品がレベルを落とすことなく5作も続けば、シリーズ終了にはならなかったのだね。
 矢張り、寅さんを生み出した山田洋次監督(現在でも現役と言う所が、又、凄い。)を筆頭に、寅さんを囲むキャラクターが魅力的だからこそ、長く長く寅さんシリーズは続いたのだと思うのである。>

NOBU
Mr.C.B.2さんのコメント
2024年5月15日

私もさすがにTVドラマ版は観ていないが、ラストで寅さんは沖縄でハブに噛まれて死んだという事になっているらしい。
でもあの後、節子の豆腐屋は寅がいなくなって如何したんだろう。

Mr.C.B.2