男はつらいよのレビュー・感想・評価
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日本映画史上に残る名作
改めて見た。年を重ね、少しは目も肥えて見ると、全49作の中で最も完成度が高い名作であることに気づく。最近の日本映画にもいい作品はたくさんあるが、必ずと言ってよいほど、どこかにスキがある。それは、一瞬のリアリティ失速だったり、脚本のほころびだったり、演技の凡庸さだったり、演出の瑕疵だったり、平凡なカメラだったり、いろいろだ。しかし、「男はつらいよ」第1作は完璧だ。
演技では、倍賞千恵子が光る。さくらの恋愛がテーマになっていることもあるが、第2作以降とは存在感が違う。もう一人の主役と言っても過言でない。当時の倍賞は二十代半ば、竜造・つね夫婦に対しては娘らしく、寅次郎に対しては妹らしく、まだ子供っぽさが残るさくらの可愛さ、いじらしさをよく演じている。クライマックスでは、大切に育ててきた博との恋をめぐって、不安、怒り、強い意志が、とても二十代半ばの女優の演技とは思えない。
主役級だけでなく、脇役の細かい演技にまで、隙がない。たとえば、マドンナ冬子の来訪を受けたとらやで、竜造がたばこをくわえ、マッチを擦って火が軸にしっかり燃え移るのを待ちながら冬子と話すうちに、思いがけず寅が帰ってくる。あっけに取られる一同に寅が二、三つっこんだあと、竜造に向かって「ほら、燃えてるよ」と指摘し、竜造が「あっちっち」と慌てて笑いになるシーンがある。マッチを擦る前から続く長いワンカット。マッチの燃える時間を伸ばしたり縮めたりできないから、芝居の呼吸が秒単位で合わないと「あっちっち」の笑いにならない。こんな一見何げないシーンまで、緻密に計算されている。
高羽哲夫のカメラがまたすばらしい。高羽哲夫は第2作以降も撮影していて、どれもすばらしいが、第1作は特にすばらしい。特筆すべきは、クライマックス、京成柴又駅のシーン、さくらに振られたと誤解した博が柴又駅で電車に乗ろうとするところに、さくらが追いつき、とっさに一緒に電車に乗り込んだ直後のカットだ。カメラは、上下ホームをつなぐ踏切から、二人が乗った最後尾車両正面を下からアップで撮っている。これは、下から見上げることを除けば比較的一般的な日の丸構図に近い。ところが、電車が発車すると、上り電車だからカメラから遠ざかるわけだが、遠ざかるにつれ、電車は画面右下の消失点に向かって小さくなっていくのだ。停車中は大きく平凡に写っていた電車が、発車とともに、夜の闇の中、画面右下の消失点に向かって小さくなっていくようすを、切れ目なくワンカットで撮っている。最終的には、1/3か1/4構図になる。クライマックスにふさわしい美しさだ。
娯楽作品ながら、日本映画史上に残る名作と言ってよいと思う。
寅さんが生きられた時代
こんにちはフーテンの寅さん
拝啓
こんにちは寅さん。
ここに来て寅さんの映画を人生初めて拝見しました。
もちろん子供の頃から存じ上げておりましたが、子供ながらに古臭い映画は毛嫌いしており○○洋画劇場などで放映されても敬遠し、今日に至るまで腰を据えて観たことはなかったと思います。
しかし、なんと素晴らしい映画ではないでしょうか。
古臭いどころか見るもの全てが新鮮で、そこらの8Kテレビのサンプル動画なんかより、どれも煌びやかなシーンばかり。
昭和の生き生きとした世界がこの90分間に満ち満ちていて、あっという間に引き込まれた自分がおり、映像の細部まで食い入るように観てしまいました。いやぁいい時代だなぁ。
ただそれだけではなく人物から建物、風景、空気感までここまで観ていて心安らぐ映画を観たのも久しぶりのような気がします。実際にこの時代を生きていなかったとはいえ、やはり私は日本人なのだとしみじみ実感。
無鉄砲で口も悪く、器用なようで不器用な寅さんの人間臭さがとても親しみやすく、生前の渥美清さんの記憶といえば、お体を悪くしているときに舞台挨拶に出られているニュース映像を拝見したのは覚えておりますが、作中の寅さんと言えば、それはそれは縦横無尽に全力投球している演技を観て感動しました。今観ても本当に笑えます笑
いよいよ私も全力で寅さんを観られるような歳となって参りました…笑
古き良き…と言いたいところではありますが、そんなことは全く感じないこの素敵な映画。遅ればせながら、これから細々と寅さんの旅の続きでも観させていただきたいと存じます。
敬具
世界遺産
もう寅さんの映画の中でしか、人と地元とのつながりを見れなくなってしまった
やっぱり盆暮れには観たくなりますよね
寅さんみたいにたまには懐かしい地元に帰って、親兄弟、幼なじみ、近所の人々の顔みたくなるのと同じなんでしょう
都会で独り暮らしも長くなると、もうフーテンの寅さんみたいなもんで、地元のみんなからはどこで何やってるんだかみたいなもんです
高度成長期を駆け上り、みな忙しく働いている昭和の中で、自分の代わりに地元に帰って旧交を温めてつながりを確かめてくれる寅さんの映画はそんな役割を果たしてくれていたのだと思います
だから、バブル崩壊とともに寅さんシリーズもまた終了したのは当然なのかもしれません
失われた20年だかは、もう地元とのつながりも失せ、その地元も少子高齢化で消滅危機自治体だったり、都会でもシャッター商店街になってしまい
柴又のような昭和と変わらないところは珍しい存在になってしまっています
だから未だに寅さんを盆暮れに観たくなるのだと思います
というか、寅さんの映画の中でしか、人と地元とのつながりをもう見れなくなってしまったからなのです
全国どこでも同じ郊外のショッピングモールに行ってもそんなつながりは無いのです
さくらのお見合いのホテルは、紀尾井町の超一流ホテルのニューオータニですね
そりゃあ寅さん無理です
奈良は二月堂かと思われます
バター(笑)の記念写真は奈良公園の中にある鷺池の浮御堂です
御前様と冬子さんを寅さんがタクシーで送り届けたホテルは、格式高い名門、奈良ホテルです
西の迎賓館と呼ばれ国賓や皇族の方々がお泊まりになるようなところです
寅さんの冬子さん宛てのハガキのシーンのあと、寺男が境内を掃くその前景の冬子さんの部屋だったところに、奈良で寅さんがかったピンク色をした鹿のビニール人形がしおれてそのまま放置されていて、にくい演出です
ラストシーンは日本三景の一つ、天橋立です
駅裏のケーブルカーで登った山の上から見下ろしています
見下ろした天橋立の付け根の左手の甍が沢山みえる寺が知恵の神様・文殊菩薩を祀ってある知恩寺で、そこの7月にある文殊堂出船祭のお祭りで、テキ屋の商売をしているようです
知恵の神様のお寺をラストシーンに持ってくるのは洒落が効いていますよね
お馴染みの寅さん、知っているつもりできちんと全作は観ていなかった。...
お馴染みの寅さん、知っているつもりできちんと全作は観ていなかった。第1作目の寅さんは当然のことながら若々しく張りがあり小気味良い。人情味溢れるその人間像はまさに日本人の心の故郷、記憶の通り愛すべきキャラクターだった。これから歳を重ねていく寅さんを楽しみに見ていきたい。
台詞回しが小気味いい。
台詞回しが小気味いい。流れるように歌うように寅さんの台詞回しがあって、それを聞くだけでも面白い。
コメディとしてのテンポの良さもあって、寅さんのハラハラしながら、とんでもないことをしでかす面白さがこの映画の魅力ですね。
今でも笑えるし、桜の結婚式では泣けます。やはり、長期シリーズになるだけはある第1作目ですね。
さくら役の倍賞千恵子さんがすごい可愛いですね。歳をとってからしか知らないので、若い頃は初めて見ました。劇中では、さくら、という名前が当時は人名としては珍しい、という話でしたけど、現在では普通ですよね。この映画の影響なんでしょうか。綺麗な名前ですよね。
おじさん役の森川信さんも素晴らしく、この映画に味わい深さを与えてますね。
寅さん役の渥美清さん。寅さん以外の何者でもないですね。愛すべきバカというか、空回りしながらも、逞しさがあるというか。でも基本嫌なやつですね。現実にいると嫌なやつだと思う。
設定をあまり知らずに生きてきたけど、寅さんヤクザなんですね。まあ、今ほどヤクザはアンダーグラウンドではなかったからかな。
さすがの映画
寅さんってかなり破天荒
寅さんという人間はありなのか
冒頭の渥美清のナレーション、故郷っていいよね。柴又は私の故郷ではな...
インテリをテーマにしたところが斬新だが・・・
第1作はあまり笑えない。インテリと労働者との関係というか、対立というか、それが寅さん映画の本質だということがよくわかる。前田吟が若い。
前田吟は労働者代表ではなくて、どっちつかずなんですね。寅さんも労働してないから、どっちつかずです。タコ社長もプチブルだし、本当の労働者は結局、映画では正面に出てこないです。
インテリは出てきます。肩書だけです。薄っぺらいです。志村喬は肩書は似合うけど、実質、大した学者じゃなさそうだ、という役柄が似合います。やっぱり、山田洋次自身、どっちつかず感を抱いていたんじゃないでしょうか。
なぜ、そこまでインテリにこだわるんでしょうか?インテリは笑いのネタにはなりますが、それを超えた何かが「男はつらいよ」たる所以だと思いますが、それは何なんだろうか?まだ全部見てないのでよくわかっていません。
1作目
寅さんのマイペース、はちゃめちゃで自己中心的、人間味、人情たっぷりなところが大好きで笑いが絶えない。
現代にはなかなか見かけなくなった人間模様をコミカルに濃厚に、笑って泣いて楽しめるように描いてる。
人間味たっぷりなキャラクターが大好きなので、こんな風に生きることさえ憧れてしまう。
寅さん映画作品では第1作目。
以前友人と別の話の寅さんを観て、すっかり寅さんの虜になってしまったので1作目からゆっくり観る事にした。
友人は何本か寅さんシリーズを観ていて、その友人曰く「寅次郎は毎度この展開だからこれ一本観れば十分だよw」と言っていたが、何本でも別の作品の寅さんを観てみたくなってしまうのはなんだろう。
また、この時代の女優さんて大和撫子、本当に美人で品のある"女優"を感じさせてくれる。
子供のまま大人になった暑苦しい問題児
総合70点 ( ストーリー:70点|キャスト:80点|演出:70点|ビジュアル:70点|音楽:70点 )
邦画の中でも特に有名な作品なのに、渥美清の暑苦しい雰囲気にあまり気のりがしなくてずっと避けていた。だが第一作がBSで放送されるということで、やはり一度くらいは見ておこうかと遂に見ることにした。
見てみるとやはり暑苦しい。彼は下品で無礼で自分勝手で周囲の人々を不快にするただの問題児でしかない。この時代ならではというのもあるのかもしれないが、お見合いの場面など見ている私も不快になった。やっぱり好きではないなと思った。
ところがしばらく見ていると、だんだんと印象が変わってくる。少年のまま大人になったようなとても際立った人物であり、その素直な生き方と周囲を巻き込む賑やかさがうまく物語に取り入れられていたし、それを演じた渥美清は上手かった。自分とは考え方も性格も価値観も違いすぎて、こんな人が近くにいると嫌だし暑苦しいという評価は変わらない。だから何度もこんな暑苦しさを見たいとも思わない。でも一度くらいはこんな暑苦しさを体験するのは悪くないかと思った。
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