おとうと(1960)のレビュー・感想・評価
全6件を表示
宮川 一夫 日本映画の底力を示すカメラマンです 記憶されなければならない名前です
日本映画界を代表する映画カメラマン宮川 一夫
本作は、その彼の撮影作品ですが、特にその彼が「銀残し」と呼びばれる特殊な現像手法を編みだし本作で使ったことでことに有名です
果たして彩度を落とした深みのある映像が美しく撮られています
それは冒頭の雨のシーンだけで明らかで感嘆させられます
桜並木の堤防の道のシーンは桜の淡い桃色が柔らかく本当に美しく撮られています
春風の生暖かさまでを感じることができるのです
ラストシーンの病院では寒々しい中に暖かみを見出だせるものでした
正に撮影が演出を行っているのです
気の強い姉役の岸恵子の美人顔はその落ち着いた色彩の中で良く映えて最も美しく撮れていました
田中絹代の初老の陰険な継母ぶりもはまっており
沈んだ色彩の中に淀んでいます
ハイライトたる姉弟があの桜と同じ桃色のテープで手首を結んで眠るシーンも、そのテープの色は彩度が落とされており鮮やかさは少しもありません
本作の一切合切が姉げんの記憶の中のものであったということなのだと思います
映画に於いてカメラマンの腕とは如何に重要なのもなのかを思い知らされるものでした
銀残しの手法は世界の手本となり、セブンとかプライベートライアンなどで今も観ることができます
宮川 一夫
日本映画の底力を示すカメラマンです
記憶されなければならない名前です
鍵と同じ市川崑。宮川一夫コンビの作品。 鬱々とした色調、アンバラン...
鍵と同じ市川崑。宮川一夫コンビの作品。
鬱々とした色調、アンバランスな画面構成と突飛な色使い、まさに市川ワールドの傑作である。碧郞君は罪深き人間の存在そのものとして描かれていて、短き人生を人の一生を凝縮している。
山田洋次が市川昆作品の中で最も尊敬する作品。腕にピンクのリボンを結ぶなどというオマージュもささげられている。
互いに支え合う家族というより、姉が一人で絆を保っているような気がした。父親(森雅之)は碧郎の素行については無関心で、ピンポン、ビリヤードなどに興じることも「何かに打ち込むことはいいことだ」などと遠くで見ている雰囲気。だけど、退学になっても金を出して他の学校へ、骨折した馬の弁償金も払ったんだろうな。 クリスチャンの継母は嫌な性格だったけど、人付き合いが苦手にもかかわらず内には家族の幸せを願っていたことだろう。そんな個々の絆を窺うことができる。特に碧郎が入院してからはそれぞれの想いが一気に溢れ出す見事な演出だ。
カンヌ映画祭にも出品されているのは、この宮川一夫の撮影のおかげだろう。“銀残し”という色褪せた中に際立たせる色がまぶたに焼き付くようだ。ストーリーも細かな編集にも不満を感じるけど、観てしばらくすると色彩だけが思い出されるのかもしれない。
岸恵子も田中絹代もいい演技。森雅之の抑えた演技も申し分ない。一番気になったのは、看護婦の江波杏子!胸もでかいし、色っぽすぎる。こんな病院に入院したら若い男は色狂いで死んでしまうぞ。
あら、川口浩だわ
岸恵子の毅然とした演技
芸能一家の才能ある若き川口浩…
じめじめとした役に徹する田中絹代
全編薄暗い
「うっすらと悲しーなー」
「おれはこのうっすらと悲しーのが」
「やりきれないんだ」
「ひでー悲しみの方がまだいいや…」
まさしく、ここ数年考えていたこと
はっきりとした原因のある不幸は乗り越えられる
もやもやした口で表せない不幸は本当に不幸
鶴瓶と吉永小百合の「おとうと」とまったくちがうのね…
ベットで手を紐で結ぶところだけかしら
お姉さん
姉、一人で頑張る姿、涙なくして見ることできなかった。自分も疲れて眠いのに、ぱっと起きてすぐに働き出す。なんだか昔の女の人は姉であれ母であれ妻であれ、こんな感じだったのではないかとTVドラマ「おしん」や、私の父方・母方の祖母を思い出した。そして父方・母方の祖父は何というか優しいけれどあんまり頼りにならない人達だった。でも働き者の祖母ものんべんだらりの祖父も私は大好きだった。
岸恵子、健気な役も本当に素晴らしい。
全6件を表示