「設定年齢よりずっと高齢な姉弟役」おとうと(1960) Cape Godさんの映画レビュー(感想・評価)
設定年齢よりずっと高齢な姉弟役
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総合:70点 ( ストーリー:75点|キャスト:70点|演出:65点|ビジュアル:65点|音楽:65点 )
前半は弟よりも姉よりも何より義母がだんとつで目立っていた。何も出来ないのに自分が絶対的に正しいと信じきっていて人に文句をつけることしかしない、どうしようもないほどに幸せをことごとく破壊するだけの義母を中心に話が進む。
このような不幸な家庭を描いた話ならば、完全な脇役扱いの弟はいったいどこで活躍するのか思ったが、後半は一転する。病気になってからの弟は義母以上に存在感が出てきて、それまでの義母の話はいったいどこにいったのかというほどに違う話になって、悪さばかりしていた弟のやつれていきながら心が繋がる姿に引き込まれた。そもそも不幸の根源の義母と頼りにならない父のいる家で、弟は面倒ばかりかけていても実は姉思いで、唯一姉が本当に家族として身近に感じられた存在を失った悲しみが伝わった。でもばらばらの家族がなぜこれでいきなり上手くいくようになったのか、その後どうなったのかについては気になった。
姉は10代から20歳前後の設定なのに、どうみても大人でそのような年齢には見えない。調べてみると姉を演じた岸恵子は当時28歳で、喋り方も大人らしくしっかりとしすぎていてやはり年齢的に役にはまっていない。ここはまだ10代なのにいろんなことを背負い込んでいる姉の姿を描くべく、もっと若い人を起用して欲しかった。その意味では弟を演じた元探検隊の川口浩のほうも似たり寄ったりであるが、こちらは病気の場面が良かったので姉ほどの違和感はなかった。不幸製造装置の義母の田中絹代はいい出来映え。
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