「「俺は春、死ぬことにしよう」」お葬式 いぱねまさんの映画レビュー(感想・評価)
「俺は春、死ぬことにしよう」
桜の花びらが舞う時期に、そんな都合よく死ねるか分らないが、ふと見た桜の木に思いを馳せるなんてのは火葬場に行ったときに誰しも思う筈である まぁすぐ忘れてしまうのだけれどね
故伊丹十三監督の初作品だが、テレビも含めて1回も観ていなかったので、午前10時の映画祭にて観賞
綺麗にリストアされているので、人物の生々しさが存分に表現されていた映像である
何と言っても今作を思い起こすと、あの林の中の問題シーンが強烈に目に焼き付いている御仁も多いだろうし、未鑑賞の自分でさえもあのシーンだけは何故か知識としてある 前後の話も知らないけれど、それ位有名な演出だ 決して襲った訳では無く、奔放な愛人の男への当てつけでああいうゴネ方になってしまったのだが、余りにも観防備なルック(団子結い、ワンピースの喪服、サテンのパンツ、そして腋からみえる毛)等々、あのシチュエーションでの意外性の内容に、おかしみと切なさ、情けなさをアイロニーとして落とし込む演出は当時でもなかなか無かったのではないだろうか さすが配給がATGである 家族の行事としての一番フォーマル度の高等なステージで、不倫相手の女がノコノコ現われる事の、男の情けなさを、さすが大俳優が演じると、その匂い立つようなエロティシズムを表現しながらもしかし決して溺れない寸での部分があのシーンには活きていて、あのシーンの不要論が有ること自体、不思議で仕方がない程の名濡れ場だと確信している
葬式そのものの運用手順の流れは、人生の於いて数が限られる出来事だから、殆どの人が素人の儘、人生を終えるのであろう そういう題材だからこそ人間性が流れ出る題材を選んだ伊丹監督の目の付け所に敬服したい
いぱねまさん、コメントありがとうございます。両作品とも公開時に映画館で見たような、どうだったか曖昧な記憶です。久し振りに午前十時の映画祭で両方とも見ることができて、やっぱり映画館がいいこと、伊丹十三がいいこと、あの頃の男女俳優の大人の感じがいいなあ、と再確認できました。