王手のレビュー・感想・評価
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聖俗が入り混じる街
阪本順治の聖俗がフラットに相互嵌入し合う不可思議な作風にはやはり大阪という街(梅田や中之島ではなく難波や新世界)がよく似合う。通天閣は博奕打ちだろうが金貸しだろうが分け隔てなく受け入れる人情の象徴にもなれば、此岸と彼岸が不気味に融和した霊的世界にもなる。実は生粋の大阪人ではないことを暴露した飛田に対して中華料理屋のオーナー役の金子信雄が「その辺にいっぺんでもションベンひっかけたことある奴なら誰でもここ(大阪)におる資格あんねん」と言っていたように、よそからやってくる何もかもを「まあええわ」で許容するのが大阪という街だ。
阪本はこうした大阪の特性に全力で凭れ掛かる。彼の構想する緻密さも現実性も整合性もかなぐり捨てた勢い任せの物語は、日本の中で大阪以外ではまず成立しない。それを知っているからこそ全力で大阪を信じる。その信念のブレなさが、物語論に関わる多少のブレを一切合切吹き飛ばす。女の描き方が雑じゃないですか?とか、そんな簡単にプロは倒せませんよ?とか、そないなことどうでもええねん。
とはいえ本作がひたすらに勢いだけの映画であるとするならば、それは初期の石井岳龍か塚本晋也のような俗悪な空転を演じかねない。しかし先に述べたように阪本は俗もやれば聖もやる。本作において散見される長回しは、俗気の独り歩きを中和する聖性として発露する。駒を置く音だけが響く将棋の試合はその好例だ。「まあええわ」的大阪根性はしばし鳴りを潜め、それまで騒ぎ散らしていた人々も固唾を呑んで試合の動向を見守る。ここに緩急が激しすぎるが故のちぐはぐさが生じないのは、やはり大阪という風土の懐深さゆえか。
藤井聡太さんと羽生善治さん
の王将戦が今、行われています。第一局は藤井さんの勝利でした。
今は洗練された印象の将棋界ですが、昔は本当に将棋指しという言葉がピッタリの人がいたようですね。坂田三吉さんとかのイメージですが、升田幸三さんとかもとても印象的な人でした。
赤井さんが「どついたるねん」に続いての主役。通天閣が似合いますね。「どついたるねん」はボクサーそのままの映画でしたから、この作品が役者としてのキャリアを確立した映画といってよいのではないでしょうか。
おもしろいです。
自給自足
広田玲央名がなんとストリッパー役。日本海まで気ままにタクシーで行って、彼女と一晩を過ごす飛田であったが、とんぼ返りでプロアマ決戦へ。「自給自足」「万国共通」「オーヤンフィフィ」と書いた扇子が笑える。
手に困ったら反則技を誘えばいい!なんだかうまいなぁ。こんな作戦なんて麻雀に通じるものがありますな。
通天閣の大きな盤での勝負。そして、ラストはみなの借金帳消しの大きな勝負。ちょっと眠くなった・・・
新世界
赤井英和は「どついたるねん」まんまなキャラでの将棋指し、豊田利晃原作・脚本での初期坂本順治らしいシュールな雰囲気と大阪。
金子信雄と若山富三郎の存在感が際立つ、この二人の大御所起用が効果抜群。
多少のメロドラマ風味は長く感じるが、若き赤井英和の魅力を素のままに活かした役柄と、クセのある脇役陣のコミカルさ、奥深い将棋の真剣勝負を不良的に描いた感覚が興味深い。
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