遠雷のレビュー・感想・評価
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「ぺろり」
宇都宮の団地のそばで、ビニールハウスでトマト栽培をする満夫。団地の女カエデと親密になるも、見合いで知り合ったあや子を気に入る。満夫の父は、売った土地のお金でバーの女チイと同棲、兄は東京にいた。満夫の親友広次は、カエデと親密になり。
田舎の青年の鬱屈した様子に共感できます。女をつくって家を出た父が帰ってくると、母は憎んだり追い出したりしないで喜んで迎える様子が面白い。「わたしの青い鳥」を歌う満夫の涙が沁みます。
石田えりがかわいい上に。
幸せの物差しって何だろうか?
土にしがみつくことでしか生きて(活きて)ゆけない若者の彷徨を画いています。
迫りくる都市化の波に飲み込まれまいと足掻く姿はいつの時代にもある風景ですが、妙に熱量を感じます。
特筆すべきはジョニー大倉のモノローグシーン
これは映画史に残る名シーンです。
『遠雷』と言うが宇都宮辺りは『近雷』だと思う。が。
温故知新にはならない日本のサブカル映画。
一応、どストライクな世代だが、主人公と僕は同い年と言う設定になっている。所謂、ポスト団塊の世代になるのだろうが、この映画に登場する様な人物は友達や知り合いには一人もいない。『統一教●』に入った奴とか、『成●闘争』で捕まった奴とか、『ニューヨークで●●●死んだ奴』とかはいるが、衝動的に殺人を犯す様な人物は一人も知らない。
この翌年の『さらば美しき大地』は我が故郷になるが、知り合いにも似たような人物が沢山いた。
僕自身の故郷を悪く言いたくないが、世代と言うよりも、その地方の住民意識によるものが大きいと思う。
否
一番大きな違いは演出家や原作者の感性なのだろう。
兎に角、この原作者は話を作り過ぎて、最後はうまくまとめた気になっている。当初から作り話だから、最後は自分の故郷に忖度して、大団円としている。一方、『さらば美しき大地』は状況を赤裸々に分析して演出されたと感じる。
深川の通りで起きた事件も我が母の生まれた村の隣村で同じ小学校だったそうだ。
ヒロポ●が止められない人も沢山知っていると母は話していた。勿論、親父も母もヒ●ポンなどに手を出していない。
バックに流れる曲はフュージョンと言う類の曲だろうが、当時は流行って、所謂垢抜けた曲なのだろうが、今聞くと実に場所柄にそぐわない曲に聞こえる。残念ながら『ながもちうた』の似合う場所だし、時代だと思う。
地方農村に生きる青年の想いが伝わる日本映画
トマト作りに賭ける地方農村の若者の現代的な生き方を描いた日本映画の力作。根岸吉太郎の演出は良いが、主人公の友人が人妻と駆け落ちする脚本が定石すぎて先が読めてしまい、詰まらなく感じた。題材と演出と主演二人の演技を観る映画。永島敏行は、「サード」「帰らざる日々」と比べると役者として自信をもってやっている様に見えて、安定感がある。
1982年 5月11日 銀座文化2
ようこそここへ
団地と農村との垣根で、トマト栽培を営む自然体の若者を見事に演じた永島敏行にまず拍手。
石田えりも怖いものなしって感じでよかった。
秀逸はジョニー大倉のモノローグシーン。殺人に至るまでの経緯を、ちょうどいい緊迫感で長台詞を語りきった。
井上氏の音楽もよかったが、「わたしの青い鳥」を歌っているときの永島敏行の感情表現も秀逸。
ポスト団塊世代の青春がここに描かれている
ポスト団塊世代の青春がここに描かれている
おそらくこの世代の青春の在り方をテーマに据えた映画は本作は最初だろう
政治の話は一切ない
関心が全く無いわけでは無いだろう
父親が選挙応援する候補者のポスターを破いたり選挙運動に冷たい視線を向けるのは、父親への反発だけではないだろう
雷はかっての世の中の政治的な情熱を表現したものだろう
しかしそれは近くで大きくは鳴らない、まして落雷などしないのだ
遠くで雷がゴロゴロと鳴る音が聞こえることはある、遠くの雲の向こうで稲光がピカピカとかすかに光ることもある
それだけのことだ
自分達は日々の仕事をするのみと達観しているのだ
トマトの市況が悪いことも、病気で作物が枯れても社会や体制やそんなものの責任にはしない
仕方ないのだ、自分で背負うしかないのだ
文字通り地に足をつけて地道に働くのみなのだ
だ
親の世代、兄の世代のように好き勝手に家を飛び出すことはできない
彼らが放り投げたことやり散らかしたことを片付けて、なんとかやりくりして、辻褄を合わせて生きていかねばならない世代なのだ
ボケ始めた祖母、無神経な母を誰が面倒見てくれるというのか
他に誰がやってくれるというのだ
それが満夫の父親への視線であり、兄を見る視線なのだ
そういった世代の物語だ
その中でも青春はあり事件もある
こうして世の中は日々過ぎて行くのだ
前の世代達が作って放り投げた世の中の歪みも矛盾も全て受け止めて、満夫とあや子はそれなりに身の丈で生きていくのだ
だから満夫は青い鳥を大きな声で涙をこらえて最後まで歌うのだ
彼だって幸せを自分なりに探し求めてみたいのだ
21世紀に繋がる青春の在り方は、ここから今も続いている
基本的にはなにも変わっていないのだ
いや、さらに下の世代には子供部屋おじさんの世代が生まれている
21世紀に映画にすべき青春は彼らの物語のはずだ
永島敏行は正にポスト団塊世代だ
その虚無感が見事に映像に写し撮れている
ジョニー大倉は実年齢は団塊の世代に近いが、見事な演技力で存在感があった
そして森本レオの役作りが秀逸だ
団塊の世代の身勝手さを一目でわかるように表現した説得力ある髪型と口髭だった
ケーシー高峰の無責任感溢れる演技も良かった
また井上尭之の音楽は大変に素晴らしい
21世紀の今日でも全く古さを感じない印象的なものだ
トマト栽培
働き者だという噂を聞いて見合い話が飛び込んできた。結婚や恋人を作ることなんて考えてもいない満夫(永島)。見合いで気に入り、早速モーテルへと向かった二人。母親と祖母の相手をするのが心配と、一時は破談になりかけたが、他は順調で妊娠もしてしまい、とんとん拍子に結婚へと向かう。
見合いが決まる前はバーの女・カエデ(横山リエ)とビニールハウスの中でやっちゃった満夫。親友の広次(大倉)が続いてカエデと関係を持ち、その後駆け落ちする。カエデには夫(蟹江敬三)がいるのだが、どうも頼りない。多少の浮気は認めるとの約束の上で結婚したらしいのだ。
結婚式当日、自宅での宴席が盛り上がってる中、広次から突然連絡が入る。結末は予想できるのだが、カエデの首を絞めて殺してしまったというモノローグはなかなか良かった。しかし殺意はないのだし、ふざけ合った末の過失致死だとすれば10年というのは長すぎるような気もする。紋付き袴姿の満夫が泣きながら歌う「わたしの青い鳥」が印象的。その後、何もなかったかのように2人で農作業をする。まるで世間話をするかのように10年について話すってのも、すごく自然に思えた・・・
クッククック。
オープニングのトマト収穫シーン、台詞なしで進むあたりで、「ああ、コレは期待できる」と確信。
小特で他車からバンバン抜かされるとか最高じゃないですか。
仕事=トマトには熱心だけど、そこを除くと地方都市の農家の一青年。若さゆえの向こう見ず、ストレートな感情の発露が心地よい。
今も昔も変わらぬ男女の構図、そして今や滅びつつある村社会の絆。
右肩上がりだった時代へのノスタルジーをも包含する、色褪せない作品。
大人の映画
小学生の頃、深夜のテレビで見ました。
小さい俺にはかなり衝撃。でも単純な話だったから、意味は理解できた。大人の映画だな~って思ったな。
田舎で農業を営む青年が結婚する話。ウチもちょうど実家で農業やってたんだよな~。
クライマックス、ジョニー大倉が人を殺してしまったと告白するシーン。そして翌日の桜田淳子。小学生の俺の頭にこびりついて離れなかった(笑)
当時の俺にはちょっと早かった。
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