「過去の邦画作品から得られるもの」駅/STATION オーばやしさんの映画レビュー(感想・評価)
過去の邦画作品から得られるもの
AmazonPrimeで、何となく観た。
TOKYOタクシーを観たからかもしれない。
映画の舞台は北海道、全編のほとんどが雪景色。
日本海の雪国の港町生まれの自分には「原風景」のような世界だ。
冒頭の駅のシーンで登場する列車のドアは自動ではない。
「そうそう昔こうだった」と懐かしくなる。
映画の本筋とは何も関係はないが、それはまるでタイムカプセルに収められた映像のような魅力がある。
出演者が、とにかく若い!
女優陣が美しい!
令和の今、あの美しさを持っている女優ってだれだろう?
倍賞美津子の女優としての迫力!
セリフで発している言葉は、心にも無いことを言っているという演技・・・
高倉健とふたりのシーンは、まさに言葉がいらない世界。
1980年、大晦日NHKの紅白を二人で見ながら過ごすシーン。
なんと実際に大晦日にTVで紅白を流しながらの長回し一発撮り!
まるで生放送じゃないか!そんな映画の撮影があるのか!!圧巻。
高倉健の母親役の北林谷栄が正月休みを終えて故郷の港から出発するのを見送るシーン。。。
もうボケてきているが、自慢の愛する息子を黙って見送る母親の愛情は何も変わらない。
雪が降って少し風も出てきた港。小さくなってしまった母親の肩。小さく振る右手。
正月ぐらいしか返ってこない息子。あと何回逢えるのだろうか。
涙腺が崩壊した。
この映画に登場する人物で「幸せいっぱい」に見えるのは、かろうじて宇崎竜童演じるチンピラの木下ぐらいで、それ以外の登場人物は、実際の人間がそうであるように、良いことも悪いことも、楽しいことも辛いことも、人間生きていれば色々あるよね。という縮図のような人間味あふれる描かれ方をしているし、またそのように演じられている。ロングショットでただ歩いているだけの、よくある会話のシーンですら、口に出している言葉の奥に「だって、しょうがない」っていう言葉が押し殺されているような、人生を演じているシーンの連続。特に「風待食堂」のすず子(烏丸せつこ)は、観ていて辛くなる。ラストシーンで、札幌に行っても幸せになれないのじゃないか?「ススキノの女は年末に自殺する子が多い」ってならなければいいな。などと心配になってしまうぐらいに、そこに「存在」していた。
倉本聰の脚本と、高倉健の演技、高倉健と共演できるなら出演したい!と映画に参加した俳優陣。これに出演できないなら「松竹辞めます」と言ってまで出演した倍賞美津子。(だからクレジットでわざわざ表記されていたのか・・・と納得)
1980年ごろに田舎の小学生だった自分には、それら演技以外にも「背景」も懐かしさを感じるし、走っている車を見るだけでもこみ上げるモノがある。
何気なく見始めたが、たくさんの「得るモノ」がある作品だった。
もちろん個人的な映画鑑賞の感想としてだ。
