「夢と現実、境界の不明瞭さ」うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー かせさんさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0夢と現実、境界の不明瞭さ

2025年3月3日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:VOD

押井守の出世作。

【ストーリー】
文化祭前日の友引高校。
生徒たちが連日泊まりこみで出し物の仕込みをしていた。
異様な興奮と焦燥感。
諸星あたる、ラム、三宅しのぶ、面堂終太郎、メガネ、パーマ、カクガリ、チビたちいつもの同級生の面々は、いつ終わるともしれない作業を、奇妙な喜びと連帯感をもってつづけていた。
だが、担任教師の温泉マークが、異常に憔悴した姿をみせる。
保健室のサクラはトランキライザーをわたすが、後から超強力下剤とまちがえたことに気づき、アパートににおしかける。
温泉マークの自室は、カビにうもれていた。
メンタルをやられた温泉マーク。
語られる言葉や友引高校と周辺の異様な変貌。
友引町全体が、文化祭前日をループしているとつき止めたサクラと面倒だが、その元凶である妖怪・夢邪鬼に、はむかう彼らすら新たな夢に封じこめられてしまう。
だが、たった一人あたるが夢邪鬼の影響から脱し、己の欲望を満たさんがため、夢邪鬼の力で酒池肉林の夢を自分に見させる。
「まったく人間なんてちょろい生き物だ」
うそぶく夢邪鬼にあたるが言う。
「おい。ラムがおらんぞ」
あたるの煩悩は、夢邪鬼の予想をはるかにこえるスケールだったのだ。

やっと見ました。
何やってんの自分。
とにかくめぐり合わせが悪くて、この年まで出会えなかったこの作品。
まあ、『うる星やつら』という作品が、ちょっとお色気で苦手だったのもあります。
『めぞん一刻』と出逢うまで、高橋留美子作品に食指がのびなかったんですよねー。

押井守の実質初監督。
つまりあの変人(失礼)が、異様なその内的世界を思いっきりぶつけてきた、最初の作品ですね。
内面と外面が裏がえしになった、誰かの認識と欲求によって作られた箱庭世界。
おなじ物語構造を『攻殻機動隊』の二作目『イノセンス』まで、くり返し創られ語られた、押井守のあやうい内的世界の表象。
これを見ているぼくらもまた、押井守の世界に閉じこめられてつき合わされているという入れ子構造。
フィクションのマトリョーシカですね。
押井守作品を語っているぼくらもまた、誰かの語る物語の登場人物なのでは……というお楽しみ方も可能。
かせこと自分の物語を書いてる者は、日常描写に全てを埋没させてしまう、ストーリーのいろはも知らぬグダグダな語り手ですが。
まいんち三食ごはんを律儀に食べさせるシナリオライター、ちょっと説教してやりたいです。
妙齢の美女と出会うシーンまで、さっさとすっ飛ばしてよ!←物語ジャンキーの寝言

いや楽しかったですよ。
もっと若いころに見とくべき作品でした。

かせさん
どん・Giovanniさんのコメント
2025年3月3日

かせさん、コメントどうもありがとうございます。
そうですね。現実的離れしていて理解しがたく、かつ、深堀りしたくなるほどの魅力があればこそ、好きになれますね。そうなると、登場するキャラクターを愛してしまうのが私のパターンです。

どん・Giovanni