「【愛する妻に裏切られ、人間不信になった男の唯一の話し相手は、うなぎだった・・。人間の心の機微の変遷を、男を取り巻く心優しき人々の姿と共に描き出した作品。】」うなぎ NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)
【愛する妻に裏切られ、人間不信になった男の唯一の話し相手は、うなぎだった・・。人間の心の機微の変遷を、男を取り巻く心優しき人々の姿と共に描き出した作品。】
ー 愛する妻が、夜釣りに行っている間に、知らない男と情交していたら、どういう対応をするだろう・・。真面目な人間ほど、正気を失ったかのような行動に出るのだろうか・・。ー
◆感想<Caution! 内容に触れています。>
・冒頭は、エロティックで凄惨なシーンが描かれる。
・だが、男(役所広司)が8年の刑期を終えて仮出所するところから本格的に物語は始まる。喜劇的な要素を盛り込みながら・・。出所時に渡されたのは、男が刑務所内で育てていた一匹のうなぎ。
・男の保護観察士のお寺の住職さん(常田富士男)と奥さん(倍賞美津子)は、口数の少ない男に対し”人間”としてきちんと接する。
・男は、刑務所内で取得した、理髪師の資格を活かし、辺鄙な川沿いに理髪店を開業する。
だが、その理髪店には、町の人達が集まるようになり・・。
ー 理髪店は、元々は社交場であったが、町の人達が自然と集って来たのは、男の無骨な人柄に惹かれたからではないかな・・。臨家の船大工(佐藤允)の誘われて、うなぎ採り・・。ー
・男が河原に倒れていた女(清水美沙)を逡巡しながらも助ける所から、更に物語はうねる様に動き始める。女は、睡眠剤を大量に飲んで自殺しようとしていたのだが、一命をとりとめ、気乗りし無さそうな男の理髪店で働き始める。
ー 男に惹かれていく女を演じる、清水美沙さんの、美しさが際立っている。ー
・謎の男(刑務所仲間だったと言っている・・)(柄本明)が、男の過去を記した紙を店に貼ったり、男に対し嫌がらせをしたり・・。
ー この男は、どう見ても”うなぎ”の化身であろう・・。ー
・女も、秘めた過去を持っており、”堂島金融コンサルタント”を経営する男(田口トモロヲ:若くてビックリ)と不倫関係に合ったが・・。女の母(市原悦子)は、明るい精薄で、堂島に財産を持って行かれそうになるが・・。
<深く傷ついた、人間の心の機微の変遷を、丁寧に描いた作品。
出所後の男を護る、様々な人間の善性あるキャラクターもしっかり立っている。
男が、女が孕んでいた堂島の子を”俺の子だ!”と言い、夜、独り、うなぎに話しかけ、川に流すシーンも良い。
今まで拒んできた女の作る弁当を持ち、刑務所に戻る男を”帰って来るわよね”と言う言葉を背に、パトロールカーに乗る男の表情と、女の表情も、又、良い。>