「怪獣も人間ドラマパートも不定形」宇宙大怪獣ドゴラ 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
怪獣も人間ドラマパートも不定形
東宝特撮1964年の作品。
東宝特撮の宇宙怪獣と言うと真っ先に思い浮かぶのが、キングギドラ。
しかし、それに先立つ4ヶ月前にデビュー。東宝特撮初の宇宙怪獣。言わば、キングギドラの先輩。
それが、ドゴラなのだ!
(あまり知られてないようだけど…)
イカか、クラゲか。とんでもない!
アメーバ状から、空を覆い尽くす巨大さへ。
設定上ではミクロから無限大まで。単体から細胞分裂を起こす。
他の怪獣とは違って表現が難しいドゴラ。その為か出現シーンはそんなに多くはない。が、特撮演出は見所。
『美女と液体人間』を彷彿させるアメーバ状のドゴラは作画合成で表現。
一番の見せ場、北九州襲撃。ビニールで作った巨大ドゴラを水槽の中に吊り、水流が浮遊感を素晴らしく表している。
橋脚を掴むドゴラの触手はアニメーション。
あらゆる特撮手法を用い、あたかもそれが“不定形怪獣”の名にぴったり。
そんなドゴラのエネルギー源は、ダイヤモンド(=炭素)。
TV衛星が突然消息を絶つ前、アメーバ状の謎の怪物を目撃した。
世界中の宝石店で何者かによってダイヤが盗まれ、深夜の銀座でもダイヤ強盗団が金庫を破ろうとしている時、そのアメーバ状の怪物が現れ、金庫を溶かし始めた。
怪物は炭素を食い尽くす事が分かる。“ドゴラ”と命名。
ドゴラ殲滅とダイヤ強奪を巡って、刑事、博士、強盗団、謎の外国人が交錯する…。
これまでの怪獣映画は怪獣メインに人間ドラマがサイドストーリーであったが、本作はどちらも両立。いや寧ろ、人間ドラマに比重が置かれている。
当時岡本喜八などがよく撮っていた東宝暗黒街ものを彷彿させる、ギャング・アクション。
刑事や謎の外国人=正体はダイヤGメンが立ち向かう。
根っからの怪獣映画ファンには物足りないかもしれないが、そこはさすが名職人である関沢新一の脚本。たっぷりの娯楽性とサービス精神。
夏木陽介、小泉博らお馴染み東宝特撮キャスト。
しかし一際印象残すのが、
ダイヤGメンのマークを演じるダン・ユマ。ユーモラスな存在だが警察や強盗団を煙に巻き、なかなか頭が切れる。当時『007』シリーズが大ヒットしていて、その影響もなきにしもあらずのスパイ…? 確か脚本上では“変ナ外人”と記してあったような…。
そして、強盗団の紅一点として圧倒的な美貌と妖艶さを放つのが、若林映子。一応強盗団の仲間だが、マークと手を組もうとしたり、最後ダイヤを一人占めしようとしたり、“読めない女”。さながら“リアル峰不二子”。尚、劇中では“動くベッド”。
にしても、関沢新一の脚本って娯楽に徹しているのはいいが、ツッコミ所多々やリアリティー皆無はまだしも、本作の“変ナ外人”とか“動くベッド”とか今だったら…。
打つ手ナシと思われたドゴラ殲滅。
が、思わぬ“虫”の存在、その毒素が決め手となる…!
意外とあっさり突破口を見出だしたドゴラ殲滅。
が、クライマックスの円谷特撮演出による攻撃、盛り上げる伊福部音楽。
ダイヤを巡る人間側の闘いも決着。
怪獣も不定形なら、
ギャング・アクションであり、刑事ものであり、ちょいスパイ風であり、王道の対怪獣映画。
色んな意味で、“不定形”!
久し振りに見たら、勿論本編は本多監督だが、なのに平田昭彦と佐原健二が出てない事に驚き!