劇場公開日 2023年12月8日

「今再び、ロマンと冒険の旅へ」宇宙戦艦ヤマト かぷちさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0今再び、ロマンと冒険の旅へ

2023年12月13日
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鑑賞方法:映画館

泣ける

興奮

幸せ

星5は映画としてでは無く、TVアニメ[宇宙戦艦ヤマト]に対しての評価。

やはりテレビ放送用に作画された映像を、映画として劇場にかけるのは無理がある。作画ミス、塗りミス、揺れる設定、定着しないサブキャラの声優…等々、一つの映像作品として観ると、ツッコミどころ満載で恐々とする。

しかし、46年前の小学生には、そんなことはどうでも良かった。
親に連れられて観に行った真夏の映画館の思い出…そして私はついに開花したニッポンのアニメブームの只中で、青春を過ごすこととなる。

紛れもない第一次アニメ革命の発火点あり、当時の製作者と視聴者の、溢れんばかりの情熱と、混乱と、歓喜の記録。それが[宇宙戦艦ヤマト 劇場版]。

それにしても、エンドロールの[配給:西崎義展]には舌を巻く。個人の名前で自主配給とは…氏の執念を感じる。この頃はまだファンと共にあったのだな…と、切ない想いもする。
事の善悪は別にして、氏の情熱が、初期アニメブームの只中で、怨念のように燃え盛っていたことは事実だろう。

ヤマトがなくても遅かれ早かれ日本にアニメブームは到来し、そのジャンルで世界をリードして行くのだろう。それはどの並行世界でも変わらないのかも知れない。
しかし現世においては、いく人かの情熱と、いく人かの野心と、いく人かの才能が混じり合い、マグマの様に滾り、[宇宙戦艦ヤマト]という偉大な作品が誕生したのだ。全てはここから始まった。

良くも悪くもヤマトから…とは時のアニメファンによる格言か?

さで、ここまでは制作側やヤマトを取り巻く環境の話だが、肝心の物語はどうか?

極上である。
敵を倒すことではなく、生きて帰ることを使命とした若者たちの戦いは、尊敬すべき指導者に導かれ、ロマン溢れる冒険譚となる。
往復29万6千光年の気の遠くなるようなロードムービー。赤く焼け爛れた地球。残された時間は一年。星の彼方の絶世の美女。大陸を吹き飛ばす超兵器…数え上げればキリが無い。何もかもが新しく、衝撃に満ちていた。

こんなアニメを思春期に観せられた日には、その少年の一生は決まったようなモノだ。
「沖田艦長のような男になる。歯を食いしばって生きて帰る!」
どこに行くのか知らないが、そう誓った少年は、46年後にも同じ気持ちで、同じ映画を観に行くのだ。
46年前には痛くなかった肩が痛い、腰が痛い。目も霞む。オレは佐渡先生に似ているかも知れん…などと思いながら。

そんなわけで、希望の物語[宇宙戦艦ヤマト]が、今日4Kリマスターされるのは喜ばしい限りだ。自分の原点を見直す体験にもなる。
また、少しでも若い世代に観て欲しいと思う。今のアニメは[宇宙戦艦ヤマト]の子供達なのだから。

そして…
当時、続編の公開には一年を要したが、今回は一ヶ月後だと言う。
絶望の物語[さらば宇宙戦艦ヤマト 愛の戦士たち]についてはまた今度…

かぷち