「和製スペース・オペラ」宇宙からのメッセージ MESSAGE from SPACE odeonzaさんの映画レビュー(感想・評価)
和製スペース・オペラ
特撮もよくできていたし娯楽性も十分なのだがなまじ映画の経緯を知ってしまうと興業優先の雑っぽさが気になりましたので未見の方は以下はお読みならない方がよろしいかと・・。
スターウォーズ人気にあやかって和製スペース・オペラをスターウォーズ日本公開前に滑り込ませろという東映社長の号令で企画進行中のジョーズの便乗映画(デビル・マンタ)を方針変更、監督に「ガンマ第3号 宇宙大作戦」でSFに実績のある深作欣二さんを抜擢して急遽製作したいわくつきの映画。たしかにスターウォーズも中世騎士物語風SFだから時代劇風SFなら東映にも芽のある話と思ったのだろう。里見八犬伝もどきの8人の勇者が危機を救うというプロットを借用したのだがどうみても玉はクルミだし、どうして性根の腐ったチンピラが選ばれたのかも腑に落ちない、原作の仁・義・礼・智・忠・信・孝・悌の趣きなど微塵もなく滝沢馬琴もあの世で怒っているだろう。
いやがる深作をアメリカに連れてゆきスターウォーズを見せたと言う、R2D2もどきのロボットまでパクる確信犯、どう収めたかは不明だが案の定、全米公開前にフォックスから版権侵害と言われたらしい。もっともルーカスは黒澤監督の「隠し砦の三悪人」に触発されたと言っているからどっちもどっちもの気はするが・・・。
スターウォーズは善と悪、誰にでも潜む心の闇を高尚に描いているがこちらは余りにも俗っぽい、卑しいキャラクター設定や民話もどきのエピソードが鼻について興を削ぐのが残念だった。おそらくスターウォーズと言うよりは「隠し砦の三悪人」の方に寄せたのかもしれない。外人は善い役で日本人を狡猾に描いているのもたぶん外国受けを狙ったのだろう、商業映画とはいえ国辱もの、最後は挽回したが日本の映画人の矜持が削がれてゆくようで東映首脳陣の節操のなさが腹立たしい。
生き残りのジルーシア人や勇士たちが地球に戻らず新天地を探す旅を選ぶのはシリーズ化への布石なのか深作監督の東映への本音なのか・・。