劇場公開日 1978年4月29日

「頑張った和製『スター・ウォーズ』」宇宙からのメッセージ MESSAGE from SPACE 近大さんの映画レビュー(感想・評価)

3.0頑張った和製『スター・ウォーズ』

2019年5月22日
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鑑賞方法:DVD/BD

笑える

楽しい

興奮

1978年に東映で製作された特撮SF。
こちらも先日見た『惑星大戦争』同様、『スター・ウォーズ』の日本公開前に作ってしまえ!…の便乗作品。

ガバナス帝国に侵略された惑星ジルーシア。
この宇宙の危機を救うべく、ジルーシアの奇跡“リアベの実”に導かれ、8人の勇者が集う…。

本作もチープさやツッコミ所はいっぱい。
まず、敵の描写。銀塗りフェイスは『惑星大戦争』の青塗りフェイスとまるで変わらない。日本で“帝国軍”をやろうとすると、どうして“欽ちゃんの仮装大賞”になってしまうのでしょう!?
特撮/合成面では、序盤で若い主人公たちが宇宙蛍を捕まえようとする宇宙遊泳シーンの合成の酷さに絶句。
何より失笑禁じ得ないのは…

何もかもメチャ『SW』!
銀河を支配する“帝国軍”みたいな悪の勢力とか、
対する若気と血気盛んな主人公パイロットとか、勇ましいお姫様とか、一線を退いた老将とか、キュートなロボットとか、
主人公パイロットたちが乗る宇宙船内やアングルに至るまで、ミレニアム・ファルコンやん!
“リアベの実”の音楽が“スカイウォーカーのテーマ”そっくり!
クライマックス、要塞惑星の動力路に戦闘機で突っ込んで破壊する作戦なんて、まんま!
…とかとかとか。

悪く言えば『SW』の劣化パクリ、でも良く言えば『惑星大戦争』なんかよりかはずっと和製『SW』。
渡米してちゃんと『SW』を鑑賞し、研究や意識や対抗や影響など、その頑張りぶりが窺える。

チープとは言ったものの、その酷い合成シーン以外は、特撮もなかなか。
特撮の醍醐味や見せ場もたっぷり。
巨費を投じ、『惑星大戦争』より製作期間を掛けられた甲斐がある。
(よく米アカデミー視覚効果賞にノミネートされたと言われているが、正しくはサターン賞外国語映画賞ノミネートである)

話もそう悪くはない。それもその筈、
『SW』が黒澤明の『隠し砦の三悪人』をベースにしているのなら、こちらは『里見八犬伝』がベース。日本人には馴染み易いのかも。
…と言っても、自分は『里見八犬伝』の話をよく知らぬが、
『里見八犬伝』云々と言うより、数奇な縁か運命か、導かれ集い戦う“名も無き英雄譚”は、『SW』にも影響与えた『七人の侍』的でもあって、王道だがやっぱり好きな設定。
主人公パイロットたちが“戦争を知らない若者”だったり、8人の中にガバナスのスパイが居たり、果たして8人目の勇者は?…など、それなりに飽きさせない要素や展開を織り込んでいる。

キャストでは、
真田広之が若い、若い!
志保美悦子は美貌だけはレイア姫に勝っている(と思う)。
千葉真一vs成田三樹夫のチャンバラ対決はファンには堪らない。
天本英世が敵ボスの母親役(!!)を怪演。
ハリウッドから招いたヴィック・モローが渋い…と感じたのは、ショーン・コネリーの吹替で知られる若山弦蔵氏の声が渋いからかな?
それにしても、8人の勇者の中で、明らかに何の役にも立ってない関西弁のキャラが…。

和製『SW』もしくは便乗作品として、『惑星大戦争』派か本作派か、よく分かれるそうだが、
断然こちら派!
辛口で書き始めたが、実はそこそこ楽しめ、それこそ『惑星大戦争』なんかよりずっとマシ!
(何度も『惑星大戦争』を引き合いにして申し訳ないが…)

そして、監督が意表を付く人選、深作欣二!
『復活の日』もSFだが、こちらキャリア唯一の本格スペース・オペラ!

近大