劇場公開日 1955年1月15日

「望んでも手の届かない理想的な家庭への思いが…」浮雲 KENZO一級建築士事務所さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0望んでも手の届かない理想的な家庭への思いが…

2023年8月19日
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鑑賞方法:DVD/BD

小津安二郎監督の
「俺に出来ないシャシンは溝口の祇園の姉妹と
成瀬の浮雲だ」との有名な言葉を
ある方からこの“映画.com”で教えて頂き、
「めし」「山の音」に続いて
この「浮雲」を再鑑賞した。

内容についてはかなり記憶も薄れていたが、
改めての鑑賞では、
廃退的な主人公の生き様にも関わらず、
何故か作品の世界に引き込まれてしまった。

小津のコメントは、もちろん作品の完成度の
ことはあるのだろうが、
それだけに留まらない「俺に出来ない…」の
意味が少しは分かったような気がした。

この作品にしろ、
溝口の「祇園の姉妹」にしても、
小津が描く主人公達とは、
その置かれている状況自体が
違っているように感じる。

表面的にも、
家庭という形が初めから無いか、
あっても有名無実化している2作品の
主人公達に比べ、
小津の取り上げる主人公達の家庭は、
人間関係の上でも経済的にも安定しており、
その上での、苦悩・葛藤・喪失感への
家族の心のひだを細やかに小津は描く。
一方、溝口と成瀬の
上記の2つの作品の登場人物は、
ギリギリの生活からの
やむを得ない選択の毎日から
安定した家庭を望もうにも手が届かず、
でも、その中で理想の家庭を希求してもがく
人間像という点で
前提そのものが大きく異なることが、
「俺に出来ない…」発言に繋がっている
ようにも想像した。

今回、連続鑑賞した成瀬3作品の主人公達に
共通して感じたことは、
望んでも手の届かない理想的な家庭への
思いだったが、
それを登場人物を通じて繊細に描く演出に
長けた成瀬巳喜男は、
やはり日本映画の代表的な監督の一人
のように感じる。

KENZO一級建築士事務所
talismanさんのコメント
2023年8月20日

うーん、苦しい。けれど昔(これは安易な言い方、すみません)の日本映画に私は本当になんというか痺れるというか好き。

talisman
talismanさんのコメント
2023年8月20日

そうなんです、何なのか。私はこの映画の中にどろどろ入りました。

talisman