劇場公開日 1959年11月17日

「☆☆☆☆★★ ※ デジタル復元・DCP版 小津安二郎が描く滅びの美...」浮草 松井の天井直撃ホームランさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5☆☆☆☆★★ ※ デジタル復元・DCP版 小津安二郎が描く滅びの美...

2018年3月21日
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☆☆☆☆★★

※ デジタル復元・DCP版

小津安二郎が描く滅びの美学。

その悲劇性は少しづつではあるが、ジワジワと心の奥底に染み込んで行く。

若い頃には理解し切れなかった〝人間の業〟や心の移り変わり。台詞ひとつひとつの、微妙なニュアンスによって意味合いが違って来る辺りが、今回はじっくりと味わう事が出来ました。
例えば、冒頭近くに三井弘次と賀原夏子のウインクを交えた台詞のやり取り。
三井弘次は「待ってますよ」…の台詞を3回言う。
この際の2回めに言う「待ってますよ」…の微妙なニュアンスには、男女の色恋に当てはめる言い方になっていて。その小津演出の艶やかさには驚かされる。
それでいて三井弘次は賀原夏子を他人にあてがうのが実におかしい(笑)

そして何と言っても。2代目中村鴈治郎を中心にしての、京マチ子と杉村春子の3角関係。
3人の名演技と巨匠の演出。加えて、小津・野田高梧の完璧とも言える脚本。これに名カメラマン宮川一夫を筆頭とする素晴らしいスタッフ陣が加わっているのだから。

以前に観た時は『晩春』や『東京物語』等と比べてしまうと…との思いがあったのですが。とんでも無い間違いで有る事に気付かされました。

これは完璧な作品ですね。

※ 小津カラー独自の赤色
映画が始まり4カット目に赤い郵便ポストが映る。
この時の小津カラーの赤色が実に鮮明に再現されていた。
以後も映画の随所で効果的にこの赤色が配置されている。
また出演者の1人である川口浩は郵便局員。
彼の生い立ちは実は…映画を語る上では何気ないこのワンカットだけど、その後の展開に於いては象徴的なワンカットになっている。

初見は並木座(日時は不明)

2018年3月2日 国立近代美術館フィルムセンター大ホール

松井の天井直撃ホームラン