「予習鑑賞すべきか、復習鑑賞すべきか、それが問題だ…」ある映画監督の生涯 溝口健二の記録 KENZO一級建築士事務所さんの映画レビュー(感想・評価)
予習鑑賞すべきか、復習鑑賞すべきか、それが問題だ…
最近になって
溝口映画4作品をまとめて鑑賞したが、
彼の生涯を描いて、キネマ旬報ベストワンに
輝いたこの新藤兼人作品を思い出し、
溝口映画の総決算のつもりで、
何十年ぶりかに再鑑賞した。
それにしても、このようなインタビュー映画
がキネマ旬報ベストワンに選出されることは
珍しいのではないたろうか。
このようなインタビュー手法の作品として、
アメリカ人ジャーナリストの生涯を描いた
洋画「レッズ」を思い出すが、
インタビュー場面はドラマ部分を補完する
ウエイトに過ぎない作品だったので、
新藤監督自らのインタビューだけに徹して
溝口健二の映画人生に迫ったこの作品は
異質に感じる。
しかし、何故か2時間半の長尺の間、
観客を飽きさせないで観せる演出は
見事としか言い様が無い。
インタビューの中で、時折
彼の人間臭ささや弱さも語られるものの、
頻繁に変える俳優泣かせの台本や、
唐突の注文によるセット班の苦労話など、
キャスト・スタッフが振り回される
ワンマン気質が浮き彫りになったりと、
徐々に溝口の本性に迫る構成が
功を奏しているように感じた。
また、恋い焦がれていたと噂された
田中絹代のインタビューでは、
溝口は私に恋していたのでは無く、
私が演じる女性に対してだったのでは、
とか、映画のことしか頭に無く、
何の面白みのない溝口健二との結婚なんて
考えもしなかったとの彼女のコメントも
溝口健二の一面を表しているようで
興味深かった。
たまたま溝口映画の復習・総括的に
この作品を観ることになったが、
この映画を予習的に経てから
溝口映画を観た方が良かったか、
悩ましく思われた。
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