あらかじめ失われた恋人たちよ

劇場公開日

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解説

劇作家・清水邦夫と東京12チャンネルのディレクター田原総一郎の共同脚本、共同監督による作品だが、脚本に於ては清水邦夫が、監督に於ては田原総一郎が主になって製作した。撮影は「愛奴」の奥村祐治が担当。なお、両監督にとって劇映画の第一回作品となる。田原総一郎は、早稲田大学文学部卒業後、岩波映画に入社し、退社後昭和三十八年東京12チャンネルに入社。主な作品に「未知への挑戦」、ドキュメンタリー「青春」がある。清水邦夫は、早稲田大学文学部卒業後、岩波映画に入社し、昭和四十一年退社後フリーとなる。主な作品に「充たされた生活」「彼女と彼」(共に羽仁進監督〉のシナリオがある。

1971年製作/122分/日本
配給:日本ATG

ストーリー

「日本人の心のふるさと、日本海へようこそ!!」、そんな大きな看板の立った北陸の白く乾いた道を気ままに旅する、快活で、饒舌で、気まぐれた青年哮。彼は、バスの中で乗り合わせた中年夫婦に人なつこく話をしかけ、夫婦が降るとそのあとにくっついて行く。そして、突然刺身包丁をつきつけて明かるく「金、出してくれませんか」と強盗を働いた。彼は、かつて、オリンピック候補にあげられた棒高跳を断念し、つぎのスポーツとしてかっぱらい強盗を選んだ。ある町にはいった哮は、農婦の主婦売春を断ったために痴漢呼ばわりされ、豚箱にぶちこまれる。よそ者をはじきだそうとするこの地方の共同体意識に腹を立てた彼は、釈放されるとすぐ町の若者のロック・グループを使って、駅前で抗議集会を開くが、町の人々の関心は、おりしもスーパーマーケット開店の宣伝に雇われて、群衆の前で彫像のように立っている金粉を塗った若い男女にひきつけられる。全身に金粉を塗った若い男女は、ギリシャ彫刻のように美しい。そして、どんな群衆の挑発にも微動だにしない。哮は、この若い男女に、わけもなくひきつけられてしまい二人の行くあとをつきまとう。そして、この二人が聾唖者であることを知る。哮には、二人の手話が、情熱的で官能的な愛撫そのもののように感じられる。ある夜、町の若者たちが、二人の仮りの宿を襲撃し、女をさらっていく。哮は男と一緒に、彼女のあとを追い、行方をもとめるが見つからない。が、翌朝、ひきさかれたブラウスをまとったまま、若い女は何事もなかったように、ゆったりした足取りで帰ってくる。そのあとで、哮と若者は、石炭石の採掘現場に行き、そこで働いている、女をさらった若者たちを、ナイフと刺身包丁でつぎつぎに刺して報復する。内灘にやってきた聾唖者の男女と哮は、米軍の残していった空の弾薬庫をねぐらにする。男女は哮を拒みもせず、といって特別な親しみを見せるという訳でもない。哮の目の前で、身体と身体をふれあわせ、独特の愛撫を始めることもある。二人だけの身体と身体の会話に、哮のはいり込む余地は全くないように見える。哮のしゃべる言葉はすべてむなしく消え彼は、どうしても聾唖者の男女の世界に加わることのできないもどかしさにじれた。ある日、三人は二人の刑事に訊問された。男は突然刑事に、体当りをくらわせて逃走した。刑事の話では、大阪の方で、男が、フィアンセを半殺しにした、というのだが、男女の過去にどんなことがあったのかは、結局深くは判らないままだ。若者のいない夜、哮は、浜辺で、ぎこちなく若い女の身体を愛撫する。女もそれに応じようとするが、翌朝、若者がどこからともなく帰ってくると、哮はふたたび二人の世界からはじき出された自分を見出し、なぜか知らぬいら立ちをおぼえる。絶望的になった哮は、町に出かけ「白黒ショーを見せる」と客を集めて弾薬庫に連れてくるが、このいやがらせは成功しない。男女は、やってきた男たちの卑しい視線に挑むかのように堂々と愛撫をくりひろげる。ローソクの炎のゆらめきの中で、男女は二人だけの世界に没入していく。哮の口車に乗ってきた男たちも、ただ気押されたように黙って見守るだけだ。哮は、この聾唖者の若い男女からどうしても離れることができない。そして、かつてはあれほど快活に饒舌に口をついて出た言葉が、次弟にひどくむなしいものに感じられてくる。ある夜、哮は、突然、しゃべることをやめてしまう。数カ月後のある別な町--。新装開店のパチンコ屋の店頭で、金粉を全身に塗った三人の男女が、それぞれのポーズをとって、彫像のようにじっとしている。それは、聾唖者の男女と哮だ。時は言葉を捨てた。言葉を捨てることによって、男女の心の世界の中に加わることができたような感じだ。夜、砂丘のうねりの陰で、女を中心に、三人が寝ている。男が、左から、女の体に愛撫の指をはわせる。そして、右からは、哮が同じようにしかし、おずおずと……。その砂丘のかなたから、いくつかの人影が現われる。その腕には「厚生省薬物部実験班」の腕章が見える。そして、機動隊の一小隊。やがて新型の催涙弾がとりだされる。砂丘の陰で愛撫をつづけていた三人の音のない世界が、突然催涙弾の発射音によってするどくひき裂かれる。哮は必死に逃げたが、二人は催涙弾の直撃を顔面に受けて倒れた。哮と、いまや聾唖で盲目となった男女は、たがいに手をつなぎあって、北陸の白く乾いた道をどこへともなく去っていく……

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映画レビュー

2.5自由な表現にある自己満足な映画作りの、好みが分かれるロードムービー

Gustavさん
2021年11月23日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

とことん自由気儘に映画を撮ったら出来上がったというようなATG作品。
主人公は放浪の学生か。何をして生活するのかと観ていると、出会う人に短刀を突き出して金を奪う、つまり強盗常習者である。それでいて唐突に町の広場で政治批判の演説を、何だか知らないが絶叫している。おかしな男である。この男の旅が唯一の筋書きであり、彼が出会う人々とのエピソードをランダムに描いたロードムービー。変な女に絡まれ、拒否すると何もしていないのに、その女は衣服を破りボロボロにして逃げ回る。男は強制わいせつ罪で捕まることになる。次に言葉が話せない男女が加わる。この恋人たちに男が付きまとうのだが、新人の桃井かおりと写真家の加納典明が演じている。映画はそれから裸の連続で、桃井かおりの大胆な演技が注目の的になる。また、白痴の女が男を連れ込んで、沼の真ん中でポツンと昼食に招待する。意味不明だが、シュールな可笑しさはある。

良し悪し以前に、自己満足に陥っても映画作りの自由奔放さは表現として尊重しなければならない。アメリカニューシネマと70年安保の影響を受けた青臭い学生映画の印象を持つ。

  1980年 1月24日  ギンレイホール

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Gustav

2.070年代のアバンギャルド

mimiccuさん
2018年6月14日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

寝られる

・包丁を持って強盗を繰り返す石橋蓮司と聾唖のカップル(加納典明とデビューしたての桃井かおり)の放浪旅
・トラックの外に捕まって道路を走るシーンに今なら絶対できないハラハラさ
・素人に台詞をしゃべらせる演出
・ほぼ裸で過ごす聾唖のふたりを動物みたいに撮ってる
・実存主義だよが口癖だった石橋
・水死体は本物らしい

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mimiccu
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