あの、夏の日 とんでろ じいちゃんのレビュー・感想・評価
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宮崎あおいさんと厚木拓郎君が若い
何年かぶりに見ました、合成CGは正直かなりお粗末ですが内容は面白いです。宮崎あおいさんは12歳くらいだったと思いますが綺麗ですね、厚木拓郎君は顔は変わってしまってますね。夏に見るとまた良いのかもしれません。
空飛ぶ菅井きん
尾道の日本家屋、背景の蒸せるような緑の庭と爺の書院と板の間の孫の絵が美しい。タイトル通り、夏を感じさせる空と雲、田畑の緑、水面の輝きと存分に表現している。
勝野洋の娘の胸を触り、大喜びする小林桂樹。老年にして貫禄の演技である。その勝野雅奈恵であるが、旬という言葉が適切かどうか分からぬが、少年の背伸び相手としてハマり役で、若々しい色香を放つ。又、子役であるブレイク前の宮崎あおいのキュートさは妖艶でもあり、これも特筆すべき点である。この辺りの撮り方は監督らしさを感じるが、少し苦笑い。
ラストの絵は実に奇妙であるが、長年連れ添った者を省略して、青い経験と共に昇天してしまう大林作品もあるわけで、菅井きんのストーリーが各所に織り込まれることで、全体として豊かになっている。
いい人生じゃったという言葉の意味
新尾道3部作の3作目
美しい尾道の光景の中で、70年前のじいちゃんの子供の頃の忘れたい記憶が蘇ろうともがいている物語です
菅井きんのチャーミングなおばあちゃんは、ボケたじいちゃんとはどこかよそよそしいのです
まるで他人のような
それが終盤に初めてあなたと呼び掛けてはっとさせられます
孫の由太を介して、この夏彼女は夫を初めて愛することができたのかもしれません
おみゃーがわしを信じさえしたら、一緒に空を飛べるのに、という台詞の意味はこれだったのです
ラストシーンで由太が見たのは、真っ青な夏空を飛ぶおじいちゃんの姿です、右手にはお玉ちゃん、左手にはおばあちゃんと3人で大空をツバメのように飛んでいます
おじいちゃんのいい一生じゃったという言葉の意味を由太はこれを見て理解したのです
とんでろ!じいちゃん!
おばあちゃんはおじいちゃんを信じることが出来て飛ぶことができるようになったのです
だからおじいちゃんと一緒に飛ぶ為に、あれからすぐあっちにいってしまったのだと思います
玉虫とはそんな魂の成り変わりの象徴なのかもしれません
病院に東京の由太の家族が駆け付けた時のじいちゃんの言葉を姉が問いただすシーンが、このラストシーンの前に挿入されているのは、本当はその台詞を私達観客に思い出して貰うためにあったのだと思います
恋愛結婚は良いもんじゃろうのう
おじいちゃんが由太の父昌文に言った言葉ですが、実はおばあちゃんにも届いています
見合い結婚でよそよそしい夫婦だったし、お玉ちゃんのこともあったけれど、本当はこころを通わせたかったんだよというラブメッセージだとおばあちゃんは受け止めています
一瞬手を止めた菅井きんの素晴らしい演技に目が吸い寄せられました
お姉ちゃんも勉強だけじゃのうて、たには恋愛でもしたらどうじゃ
これは由太の口を借りたおじいちゃんのお姉ちゃんへの言葉だったのかも知れません
Houseハウスを思い出させるような合成やアイリスが多用されています
ピーカンとは単に快晴という意味ですが、本当は映画の撮影手法を指すと大林宣彦監督が特典映像で語られていました
真っ青な夏空の青が撮影できる露光で撮影しても、人物が真っ黒にならないように強い照明を当てて、空の青さと人物をそのまま同時に撮影する手法のことだそうです
人物に露光を合わせると、空の青さは白飛びして、白い空にしかならないそうです
例えばロープウエイ沿いの高台の岩場のシーンがピーカンです
真っ青なピーカンが撮れていなければ、それこそ本作は意味不明の作品になってしまいます
本作は夏空が本当に真っ青でなければ意味をなさないのです
それは見事に成功しています
そして、その真っ青な夏空の下、尾道の街が広がっているのです
青は青春の青にも通じているのです
人生の夏です
見事な作品です
さすがは大林宣彦監督です、傑作です
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