「準傑作にして傑作と同じだけ見る価値がある」赤い天使 KIDOLOHKENさんの映画レビュー(感想・評価)
準傑作にして傑作と同じだけ見る価値がある
若尾文子は、この時代の最も優れた女性のひとり。優れた女優とは?その女優にしかできない映画が作られるということであろう。脚本の時点から彼女をイメージした映画がたくさん作られている。この「赤い天使」も、まさにそれだ。 兵隊達にケガされてしまい。軍医に恋してしまい、肉体関係してしまい。兵隊たちにそういう目で見られる。そうしながらも 自分の立場や、自分の知能でできることを出来る限りしてゆく。この役は、普通の女優ではキャラが崩れて破綻しまうと思う。若尾文子は見事に演じきった。この時代。戦争をえがいた映画はいくつもあるが、このような切り口で描かれた戦争は他にない。女の目から見た地獄の前線。最後のまとめ方の辺がなんとなくストーリーとして中途半端で消化しきっていない印象はあるものの。増村保造の傑作の一つとして数えられるべきであろう。
そして、増村保造はこの年に三つの傑作を作っている。この作品のほかに「陸軍中野学校」と「刺青」である。陸軍中野学校は、
ネタバレ注意。
戦争直前の日本が舞台で中野学校というところで、秘密裏にスパイを育てる話。スパイもの作品として、実に面白い切り口の映画だ。前半、後半の切り替えもまた、キマっている。後半はスパイものとなっている。それが、とてもうまくいっている。ややこじんまりとした作品ではあるものの世界的に見ても、これはスパイものの最高傑作の一つである。もう一つの「刺青」は?黒沢明が徴用した。カメラマン宮川一夫を使っている。この作品はおそらくカメラマンに好きなように撮影させていると思う。若尾文子の体が、実に美しく撮れている。これはまさに写真のすばらしさ、ポートレートの素晴らしさを見るような映画である。ストーリーもまとまっているのでとても見やすく、傑作と言える。