「奥の深い人生ドラマを織り込んでいて、記憶に残る1本となりました。」4分間のピアニスト 流山の小地蔵さんの映画レビュー(感想・評価)

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4分間のピアニスト

劇場公開日 2007年11月10日
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奥の深い人生ドラマを織り込んでいて、記憶に残る1本となりました。

 本国ドイツで大ヒットした作品です。
 シネスイッチ銀座上映中は、見るべきかどうか随分悩みました。なんとかDVD発売記念特別試写会で見てくることができました。

 クラッシックか、ジャズかで教える方と教えられる側がぶつかることがメインの作品と思っていました。しかし実際見てみると、もっと奥の深い人生ドラマを織り込んでいて、記憶に残る1本となりました。
 そして音楽の方も想像以上に良かったです。ジャンルを超越したところは、『奇跡のシンフォニー』と共通していますね。
 カット割りと時間軸が前後するので、多少見づらいかも知れませんが、映画ファンなら見応えたっぷりの作品ですので、ぜひDVDでご覧になってください。

 クラウス監督がこの作品の構想を練っていた8年間の時間の中で、新聞記事あった一枚の写真に目が釘付けになったのです。
それはとある刑務所で80歳の年老いた女性が、刑務所でピアノを教えている写真でした。その写真からインスパイアされてこの作品ができたそうです。

 監督はこう語ります。
 「人間は、たとえ年老いても、自分に残された時間をただ生きるのでなく、別なチャンス、別な世界に入っていくチャンスがあるのだ。少なくとも年老いてすり切れていくことに抗うことはできるはずです。」
 このコメントを見て、納得しました。

 作品の中で老いたピアノ演奏家クリューガーはなぜ、凶暴・粗悪な殺人犯ジェニーに、何の恐れもなく近づいて、親しくピアノを指導しようとしたか。
 彼女は口癖のように、私には音楽しか見えない。だからあなたがどんな人だろうと関係ないとジェニーに告げました。それはジェニーの才能を見込んだからばかりではなかったのです。

 作品の中でカットバックされていく、クリューガーの過去。
 それは第二次大戦にドイツ軍の従軍看護婦をしていた頃の悲しい想い出。秘めたる恋の相手が、思想犯として捕まったとき、聖書のペテロの如く「その人は知らない」と答えてしまったのです。愛する人を見殺しにしてしまった。その人が、生きていたらどんなにか才能を開花させることができただろうに。」
 クリューガーは戦後ずっと、自分を責め続けました。そして、愛する人が獄中死した刑務所の地を離れずに暮らしていました。だから、ジェニーに出会ったとき、天性の才能を開花させることが、自分のミッションであり、せめてもの許しになるのだと感じたのだろうと思います。

 信念でピアノ演奏を押しつけようとするクリューガー先生に、何故だかジェニーはなつきます。看守だろうと、機嫌が悪ければ半殺しにしてしまうほど荒ぶるジェニーではあったのです。
 どんな悪人でも、自分を恐れず聞く耳を持つものには、心を開くことがあるものだなと二人の絡むシーンで思えました。
 孤独なジェニーにとって、初めて自分を理解してくれる人と出会った気になったのでしょう。殺人犯というだけで、人は心を閉ざします。その悪を持って、その人の人格全てを裁くことが、できるでしょうか。そして裁くだけの資格を持っているものでしょうか。
 ジェニーの語る身の上話を聞くに付け、小地蔵は彼女に深い同情を禁じ得ませんでした。さらに関係者の話がつけ加わって、無実なのかも知れないとまで思えたのです。

 脱線しますが、なぜ悪人こそ救われるべきなのか?親鸞聖人の言葉に?と思う人も多いことでしょう。でも、、この作品のように、一方的に悪人のレッテルをぺたりと貼って、善人面をしている人のなんと多いことでしょうか。
 行為さえ為さないものの、心の中では常に悪しき我欲に包まれている人は、善人と言えるのか、はなはだ疑問ですね。

 さて、彼女の身の上を、全て肯定的に聞いてくれたから、ジェニーはクリューガーに好きだと告げたのです。けれどもその告白には、クリューガーにとって苦い想い出を呼び覚ますものでもあったのです。
 クリューガーの過去という伏線が、この作品の影の部分として味わいを深いものにしています。

 ラストの最後の演奏につなげていく、クリューガーの思いついた作戦は、ホント犬も驚く予想外!
 そして最期の4分間は映画史上いや音楽史上でも、かつてない驚天動地の壮絶演奏でした。ここは「必聴」ですよ。

 新人というのに、ハンナー・ヘルツシュプルングは感情のほとばしるジェニーの喜怒哀楽を完璧に演じていて、すごいと思いました。

流山の小地蔵
さん / 2008年6月6日 / PCから投稿
  • 評価: 5.0
  • 印象:  -
  • 鑑賞方法:映画館
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