鳳凰 わが愛 : 映画評論・批評
2007年11月6日更新
2007年11月3日より恵比寿ガーデンシネマほかにてロードショー
中国滞在記とセットで読むと面白い
映画「セブン・アンド・アース」に続く、中井貴一“中国進出プロジェクト第2弾”。今回は“兼プロデューサー”というおまけ付きだ。勝手に“プロジェクト”と名付けたのにはワケがある。前作同様、同時に出版された中井著の中国滞在記「日記2」と映画のセットで成立していると思うからだ。
もちろん本来、映画はスクリーンに写っていることがすべて。だが、未だ日中間には歴史認識に大きな溝があり、それが映画作りに影響する。本作は1920年代から第2次大戦後という日中の微妙な時代を背景に、刑務所内で出会った男女が、時代に翻弄されながらも約30年間、互いを思い続けたラブストーリーだ。中国残留孤児の設定である中井には、日本人であるがゆえの火の粉がもっと降りかかるはずだが、「日中友好35周年記念作品」と銘打たれた本作品では、国家間の摩擦を生みそうな描写はスルー。電影管理局の検閲がある中国では致し方ない。だが、そんな日中間の軋轢も、CGに頼らず、ただひたすら良い絵を撮りたいがために労力を惜しまぬ中国スタッフのパワフルさも、すべて「日記2」がフォロー。「日記1」よりマイルドになったとはいえ、お国柄の違いや市井の日中人の本音が綴られた中身は、映画より遙かに面白い。
映画が、中井の著書を超える秀作を生んだ時にこのプロジェクトは完結する。それまで中井には、プロジェクトの続行を期待したい。
(中山治美)