劇場公開日 2008年6月7日

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「魚河岸とはあまり関係ない普通の人情もの映画」築地魚河岸三代目 Cape Godさんの映画レビュー(感想・評価)

3.0魚河岸とはあまり関係ない普通の人情もの映画

2013年3月16日
PCから投稿
鑑賞方法:TV地上波

幸せ

総合:60点
ストーリー: 60
キャスト: 75
演出: 65
ビジュアル: 65
音楽: 60

 漫画を原作にした映画なのだが、物語の焦点は原作とはかなり異なる。どうも映画会社としては日本人の好きそうな伝統的な人情ものを主題にしたいようである。

 原作では魚河岸を中心として魚のことと魚河岸の仕事のことはもちろん、流通・食文化・人情を魚河岸を通して描いた物語であるが、それをこの映画に期待していると肩透かしとなる。原作では慣れない環境でも魚市場に本当に興味を持って、その好きなことにたいして一生懸命努力していく主人公の姿が面白い。しかしそのような情熱を何故主人公が持って努力をしていくかが映画でははっきり描かれることはない。だから何故魚河岸なのか視聴者としてのめりこめない。
 この映画では設定が魚河岸であり登場人物もそれに準ずるという以外にあまり原作と共通点がない。そもそもこのような内容の映画ならば、魚河岸を舞台にしたこの原作を選ぶ必要性がどこまであったのかという疑問が見ていて最後まで残った。ブリの目利きの場面に関しても、これが美味しそうに見えたからというまるで小学生のような理由で選び、しかもそれがそのまま正解という結論で締めくくっている。少なくとも原作でそのようないいかげんなことが書かれることはなく、このような場合は何故それがいいのか、しっかりとした理由は挙げられる。
 このことは、「築地魚河岸三代目」という映画なのに、魚や魚河岸のことを真面目に描く気がないのだと宣言したようなものだと思える。せっかくの魚河岸なのだから、それを映画の特色としてあまり専門的にならず物語の邪魔をしない程度にその仕事の内容を徐々に紹介していったほうが、視聴者の興味を引き立てると思うのだが。こういう理由があったからこの魚が一番いいと劇中で言わせれば、ああこれが魚河岸で働く人の能力なのだとわかり視聴者の興味を引くだろうに。

 恐らくマーケティングの結果として、寅さんや釣り馬鹿日誌の後を継ぐ人情ものとして地位をこの映画で確立しようとしたのだろう。でもその結果としてどこにでもある個性のない人情ものになったような気がする。原作を全く知らずに見た視聴者でも、この映画ならではの個性・特色を強く感じることが出来る人は少ないのではないかと想像する。
 批判的なことを多く書いたが、別に駄目な映画なわけでもない。ただいい映画というには一歩足りないと感じる。

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Cape God