「ベンアフ監督に向いてる!次作に期待大!」ゴーン・ベイビー・ゴーン trekkerさんの映画レビュー(感想・評価)
ベンアフ監督に向いてる!次作に期待大!
すでにアカデミー賞脚本賞を獲っていて監督志望だったベン・アフレック。初監督作とは思えぬ本作を観ていると、随分、演出や撮影技術についても勉強してたんだなーと感心。
俳優出身の監督らしく、俳優それぞれに見せ場、演じどころを用意し、彼らの熱演を、無駄なカット割りをせずに丁寧に撮っている。これなら、俳優たちも、満足ゆく演技が出来たことだろう。
弟ケイシーを主役にしている辺りも微笑ましい。エド・ハリスと、奥様で『ストリート・オブ・ファイヤー』のエイミー・マディガンを担ぎ出したり、いまいち、ブレイク出来ないミシェル・モナハンを出したりと、配役もいい感じで、演技の出来る役者さんを揃えている。その結果、俳優たちの演技合戦を、舞台を見ているかのような緊張感を持って楽しむことができる。
また、ジョン・トールの撮影はさすが。シリアスなテーマにあわせた重厚な絵作りが作品に重みを与えている。
作品のテーマは、本当の正義とは何か?を問うものとなっている。911以降、揺らいでいるアメリカの正義。『ダークナイト』でも『ハンコック』でも、『ノー・カントリー』でも、最近のアメリカ映画の潜在的なテーマは、いつもそれだ。そのタイムリーなネタを捉え、鑑賞後に考えさせる作品に仕上げているところは評価できる。
ただ、残念なのは脚本だろう。原作は読んでいないので比較できないが、
・エド・ハリス演じるレミー刑事がすぐに母親を逮捕していれば、娘には別の人生が開けた。
・モーガン・フリーマン演じるジャック・ドイルのところに娘がいたら、娘の顔は全米中に知れ渡っているんだから、ばれるだろう。また、ジャック・ドイルは誘拐で終身刑のはず。そこに情状酌量がどれだけ与えられるかは裁判次第。
・最後にすべてが明るみに出たんだから、母親は当然、逮捕される。そのシーンがない。
など、いくつか欠点があり、どちらが正しいか?を問うには理屈付けが若干甘い。シリアスな作品なだけに、その前提がクリアにならないと、そこに目が行ってしまう。力作なだけにもったいない。
『ミスティック・リバー』の原作を選んだだけに、どうしてもクリント・イーストウッド作品と比べられてしまう。傑作と比較される素材に挑んだベンアフの勇気は認めるが、逆に粗が目立つ結果にもなっている。だが、鑑賞後に何かと考えさせられ、唸る映画を撮ったベン・アフレックの健闘には拍手を贈りたい。
次作は、さらにクオリティの高いものを観られるという期待が大だ!