「主人公の決断が嫌い」ゴーン・ベイビー・ゴーン Cape Godさんの映画レビュー(感想・評価)
主人公の決断が嫌い
総合75点 ( ストーリー:70点|キャスト:75点|演出:80点|ビジュアル:70点|音楽:70点 )
全体としてはなかなか張り詰めた空気を演出するベン・アフラック監督の手腕に感心させられた。チーズのところに行って交渉する場面は、最初はおとなしくしていても後で脅し返すところは緊迫感があったし、薬にはまっている犯罪者のところへ行く場面は二度とも生々しかった。
以下はけっこうねたばれしています。
複雑な物語は二転三転して解り辛いが、要は法律と倫理との狭間で難しい二者択一の決断を迫られる。
①法律を守り建前が成り立つが、可能性の高い不道徳と不幸
②法律は破るが、ある意味での倫理の成立と確実性の高い幸せ
の二つの選択肢がある。どちらを選ぶかが映画の一番の見せ場なのだが、ここで主人公のケイシー・アフレック演じるパトリックは迷わない。
しかし私は彼と逆の決断をするということで迷わなかったので、パトリックには全く賛同出来なかった。一時的には改心したとしてもこんなひどい母親がいまさら変わるわけなんてないじゃないかと最初からわかっていた。しかも彼は性犯罪歴のある麻薬中毒者が少年を殺したところをみたはずだ。その結果として恋人のアンジーが彼に対する信頼をなくしたのも理解できる。やっぱり子供をかえりみない母親の姿を後に見ても注意すらしない彼は、いったい自分の決断をどう思っているのだろう。法を犯し警官を辞めてまで子育てをする決意をしたモーガン・フリーマン演じるジャックが言ったように、彼が何十年か後に自分がやったことを後悔するようにひたすら望む。出来ればすぐにでも彼が後悔することを望むが、それだけにとどまらずアマンダの成長過程を直視して現実を見つめてほしいものだ。この決断に迷わない彼にはおおいに失望して好きになれなかった。
それによくよく考えてみると母親は薬中毒で運び屋で人の金を盗んでいておいて、その後も逮捕もされずに幸せそうにしているのは何故だろう。その二点で物語がすっきりしなかった。いい映画なのに日本では劇場未公開なのは、このあたりが原因で日本受けしないと思われたのかもしれない。