漫画が原作という本作は、マーベルコミックスさながらの展開を迎えるアクションホラーだ。最後の最後で''彼らは帰ってくる"なんてメッセージを残してくれても良いくらいだ。「30デイズ・ナイト 訳:30日間の夜」というタイトルの様に、1ヶ月太陽が顔を出さない極夜が舞台となる訳だが、永遠と続く暗闇と、真っ白な雪に飛び散る血飛沫や肉片という対比が際立って見えるシーンがあり、混沌とした世界の中で美しさすら感じる瞬間が多く、非常に印象に残っている。どうもオタク気質が伺える作品だったが、製作はあのサム・ライミ。やはり彼はこういうマニアックな作品がホームグラウンドなのだろう。
ゾンビとヴァンパイアは似て非なるものだが、本作を観るとそれがより分かりやすい。彼らは言葉でコミュニケーションをとり、彼らの伝統を重んじているのだ。かなり暴力的なシーンは多いが、どこか肩身の狭い思いをしているヴァンパイア族のバックグラウンドも気になる所だ。本編113分というそれなりの長さを誇る作品だが、本作の弱点は映画にしては長い「30日間の夜」を描くという事だ。どうしても建物に籠り、数日経過してしまうシーンもある為、生存者が極限の30日間を生きている恐怖感や絶望感が持続しないのである。
ラスボスキャラに魅力が少ないのもやや寂しいが、どう見ても異形の者である彼らのデザインはこだわりを感じる部分でもある。
本作のベストシーンは、ヴァンパイアの襲撃を受けるバロウの街を垂直に撮った俯瞰映像で表現しているシーン。個人的には「タイタニック」の"あの"シーンより好きである。
部分的な注文はあるが、ヴァンパイアホラーの中では本作は上位に値するだろう。