アフター・ウェディング : 映画評論・批評
2007年10月16日更新
2007年10月27日よりシネカノン有楽町1丁目にてロードショー
西洋人の本質を描き出したスサンネ・ビア監督の意欲作
予期せぬ悲劇に翻弄されていく家族や男女を通して、善悪で単純に割り切ることができない複雑な感情や関係を、繊細にして冷徹な眼差しで描き出す。スサンネ・ビアのスタイルは、ドグマ作品「しあわせな孤独」以来、一貫しているが、主人公たちの位置づけには興味深い変化がある。前作の「ある愛の風景」ではアフガン紛争が、この映画ではインドの貧困が盛り込まれ、彼らが、西洋人であることに関心が向けられているのだ。
インドで孤児たちの援助活動に従事するデンマーク人のヤコブ。彼を祖国に呼び寄せ、巨額の寄付と引き換えにその人生を支配しようとする実業家ヨルゲン。孤児を守るコスモポリタンは当然、傲慢な西洋人に激しい苛立ちを覚える。だが、ヤコブにも関わる秘密が明らかになるとき、その図式が揺らいでいく。
ふたりを対照的な存在にしているのは、何よりも境遇の違いである。力を持つヨルゲンは、自分の手が届かない未来までコントロールしようとし、喪失を背負うヤコブは、理想に救いを求めようとする。しかし実は彼らは、どちらも本質的に西洋人であり、父親としての愛に突き動かされている。スサンネ・ビアは、そんな彼らの本来の姿を浮き彫りにしていくのだ。
(大場正明)