「アニキ」フィクサー(2007) kossykossyさんの映画レビュー(感想・評価)
アニキ
ワキの下に大量の汗をかいていたティルダ・スウィントン。魔女に変身するのか、背中から羽根が生えてくるのか、などと彼女の動向に注目してみたが、やはり魔女的な性格だった。法務の責任者としてマスコミのカメラでスピーチする姿と、その練習風景を交互に映し出したり、運よく素質を認められた経歴をも考えると、なかなか興味深いキャラクターであったりもする。
そして、巨大法律事務所のトップ弁護士であるアーサー(トム・ウィルキンソン)も魅力的なキャラだった。“人生の12%を費やした”と嘆く姿と、マイケル・クレイトン(ジョージ・クルーニー)が過去の実績により一目置いている弁護士ということを照らし合わせてみても、農薬会社の不正告発と会社への貢献という挟間で精神を患ってしまうことも想像に難くないのです。
その魅力的な2人に加え、兄貴キャラのジョージ・クルーニーが活躍する。しかし、“フィクサー=もみ消し屋”などと説明されても、彼はそのフィクサーぶりを発揮しない。訴訟専門の弁護士ではなく裏稼業としての掃除屋。ひき逃げ事故を任されても、「ミラクル・ワーカーじゃないんだ。janitor(辞書には守衛、管理人。字幕では掃除屋)だ」などと自虐的になったりするほど落ちぶれていて、従兄弟との共同経営のレストランの借金に悩んでいる男なのだ。
予想していた骨太の社会派映画とも一味違っていて、『エリン・ブロコビッチ』のように一般市民からの視点でもない。どちらかというと哀愁漂わせるアニキ映画になるのだと思う(多分違う)。アーサーの死に疑問を持ったりしても、自分は借金を返すためにボスに無心するために悩んでしまう小市民的なところ。金を返した後にポーカーに興じるなんてのも人間らしいと思う。それに従兄弟のティミーに対しても怒りを露わにしないナイスガイなのところとか・・・警官の弟に対してもしっかり借りを返すところにも温かさを感じるのです。
『シリアナ』を思い出してしまうようなベンツの爆破も迫力があった。『オーシャンズ12』でもあったような気がするけど、なぜかアニキには車爆破の映画が多い。そして、ラストの魔女と対決するシーン。ありがちな法廷劇をとらず、2人の駆け引きをメインにするなんてシビレまくり!2人の鼓動も上昇していたんだろうけど、観ている方だって脈拍数が急上昇。エンディングのアニキ映像ではで息を整えるのに丁度良かった。大金をもらって豪遊すればよかったかな・・・いや、やっぱりこれでいいんだ・・・と苦笑するアニキ。いいぞ!