劇場公開日 2008年12月27日

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アンダーカヴァー : 映画評論・批評

2008年12月24日更新

2008年12月27日より渋谷東急ほかにてロードショー

私たちはもはや、明るかった過去さえも語ることのできない時代にいる

1980年代末、世界は大きく動いていた。東欧の共産党政権が次々に倒れ、ベルリンの壁も崩壊。「東西対立」がついに終わり、アメリカとその民主主義の夢がいよいよ世界をひとつにまとめるかに見えた。今となってはそれもまた世界の崩壊の始まりだったとしか思えない、対立の時代の終わりの前夜。それがこの映画の時代背景となる。

しかしこの陰鬱な空気は何だろう。ニューヨークの警察一家とロシアンマフィアの間に起こる出来事は、新たな時代の幕開けに全くふさわしくない果てしなく深くどこまでも続く泥沼を、スクリーンに広げるばかりである。アメリカの正義を代表していた父はまさにそれを背負ったために無駄死にし、それを受け継ぐはずだったできの良い兄もまた凶弾に倒れ、彼らふたりに反発していた出来の悪い弟が、彼らのように堂々と正義を振りかざせないまま彼らの役割を継ぐことになる。アメリカはどこかで何かを失敗したのだ。その痛みとともにしか私たちは先に進めない。そんな息苦しさが、さらに彼らのアクションを重くする。

21世紀に入っての世界の混迷の不吉な予感が、この物語を語っていると言ったらいいだろうか。私たちはもはや、明るい未来どころか、明るかった過去さえも語ることのできない時代にいる。そのことを実感させられる映画である。「イースタン・プロミス」「イントゥ・ザ・ワイルド」とともに見ることをお薦めする。

樋口泰人

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