「もう一度、『ゴッドファーザーPARTⅡ』」グッド・シェパード trekkerさんの映画レビュー(感想・評価)
もう一度、『ゴッドファーザーPARTⅡ』
腰の据わった演出で俳優たちの共演をじっくりとみせるちゃんとした大人のドラマ作品。スター俳優勢揃いで、知ってる役者さんたちが入れ替わり立ち代り出てくるのにビックリ!
だから、面白いのか?というと、そうでもないのだ…。
デ・ニーロ監督自身はCIAをリアルに描いたドラマが作りたかったと言っているが、今作では、CIAの諜報活動は実際には描写せず、“マザー”と呼ばれた一人の男を通して、組織に命を捧げた男の苦悩を『ゴッドファーザーPARTⅡ』に非常に近いタッチで悲哀たっぷりに描いている。そのため、物語に派手さが皆無。マット演じる“マザー”は寡黙で内にこもるばかりで何を考えているのかもわからない。
また、デ・ニーロは『ブロンクス物語』ではスコセッシ調、今作ではコッポラ調。クリント・イーストウッドやロバート・レッドフォードのように自分の演出スタイルを持つまでには演出技術が出来ていないため、今回のような、あまりにも『ゴッドファーザーPARTⅡ』と似たような話にしてしまうと、コッポラの演出力との差が歴然と出てしまっている。役者を丁寧に撮るばかりで、作品に強弱がなく1本調子で2時間45分はつらい。
これだけ、じっくりと描いていると、脚本の粗も目立つ。
・英国諜報部は、マフィアでもないのに何故、教授をなぶり殺しにするの?
・マットの息子は神経質で性格テストで落ちそうなくらい弱い子なのに、なぜCIAに入れるの?
・息子はなぜ、パパが嫁を殺すことに気付かないの?
・偽亡命者は誰だったの?
・マットはこの作品中、3回しか女性と関係を持ってないの?
とか、くだらない疑問が次々と頭をよぎる。
何より主題が明確でないのは痛い。
CIAとマフィアは同じだといいたいのか、当時の彼らは、神や家族よりも愛国心が生きるよりどころだったといいたいのか、歴史の無いアメリカ人にとっていかに国家が重要かということがいいたいのか。どちらにしても、CIAを肯定的に描いているのは確か。
きちんとした映画で観る価値はあると思うのだが、イマイチはじけない地味な作品でございます。