ふみ子の海のレビュー・感想・評価
全4件を表示
ふみ子は海を「きれい」と言ってたけど、〆香姐さん演ずる遠野凪子は海を見ていなかった。
なにしろ遠野凪子だ。弱者を助け、悪を挫くという気高さまで備え持つ芸者なのです。憎々しい遠藤賢一に対して時には色気で、時には軽業師のような身のこなしでやっつけてしまう。そのまま隠密同心として口上を語り出しそうな勢いさえあった。
盲女性自立の先達者となった粟津キヨさんをモデルにした市川信夫の同名小説を映画化した作品。昭和初期、新潟県頚城郡。主人公ふみ子(鈴木理子)は栄養不良がもとで4歳で失明。母親(藤谷美紀)は心中を図ろうともしたが、ふみ子の言葉で目を覚ます。やがて盲学校に通わせるという話も舞い込んできたが、貧しさゆえに断念せざるを得ない。8歳になったとき、自ら母のために豪雪地帯・高田の按摩屋へ奉公にでるのだった・・・
厳しいながらも盲人女性を一人前にする優しさをも秘めた師匠(高橋惠子)。頭のいいふみ子に対しては「腕が大事なんだ」と教え込む。ドスの利いた声。盲人ならではの仕草など、女優魂を見せられた思いだ。
ヘレン・ケラーをモチーフにしたような点字に関するエピソードは心が洗われる。そういえば『奇跡の人』においても、感動を与えてくれたのは本人よりもサリバン先生だったりするのですが、主人公ふみ子の頑張りよりも周りの師匠、〆香姐さん、サダ、りん先生(高松あい)といった人々の優しさが泣かせてくれる。そしてヘレン・ケラーが来日・・・ううう。
こういう展開になってくると、どうしてもアン・バンクロフトを思い出してしまう。アン・バンクロフト、アン・バンクロフトと呪文のように名前が脳内に溢れ返るため、何度も登場した滝壺薬師住職のお経を忘れてしまいました・・・途中までは覚えてたのになぁ・・・
花見は、目開き(めあき)だけのもんじゃねぇだす
映画「ふみ子の海」(近藤明男監督)から。
戦前、貧しさ故に永遠に光を奪われた、全盲の主人公「ふみ子」。
小さい頃から、あんまの師匠・笹山タカ(高橋恵子さん)に弟子入りし、
「おしん」を思い出させる厳しい修行を受けるが、
多くの温かい人々に支えられながら、彼女は成長していく。
そんな心温まる物語であるが、
その根底に、なにくそ・・という彼女の負けん気がある。
それを感じさせてくれた台詞が、
「花見は、目開きだけのもんじゃねぇだす」だった。
健常者の男に「めくらでも花見が出来るのか?」とからかわれ、
どうするのかな?と思っていたら、この言葉を返した。
さらに「私は舌で花見するんだ」と言って、桜を食べてみせる。
その気持ちの強さに、私は感動した。
健常者以上に、人間らしい感覚を持ち合わせていた。
映画のサブタイトルにもこう書いてある。
「ほんとうに大切なものは目に見えない」
う〜ん「星の王子様」と同じフレーズだぁ。(汗)
子役の健気さに心打たれる名作
しばらく前に、舞台挨拶つきの試写会で鑑賞しました。
その時に登壇した高橋恵子さんも褒めていたのですが、子役の鈴木理子ちゃんが、実に素直で、ひたむきで、「ふみ子が、まさにそこに居る(高橋さんの言葉)」ような、素晴らしい演技を見せてくれています。(個人的には、ポスト「安達祐美」に成長し得る逸材だと思っています。)
様々な苦難や悲しみを乗り越えて、なお、前向きに生きるふみ子の健気さに心を揺さぶられました。詳しくは書きませんが、その「健気さ」を象徴するような、ラストシーンには、誰もが涙できるのではないでしょうか。新潟に残る美しい自然も、効果的に挿入されています。
高橋さん自身も、「これまで演じたことのない役柄」に挑んでおられ、イメージを一新し、役者としての新境地を拓いているのも見逃せません。
俳優人気や話題先行の昨今の作品群とは一線を画し、日本映画もまだまだ捨てたもんじゃないと、素直に感じさせてくれる底力を持った秀作だと思います。是非、ご鑑賞をお薦めします。
全4件を表示