パンズ・ラビリンスのレビュー・感想・評価
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少女が生きるべき世界とは…
現実の世界をしっかり生きるべきと大人は言うけれど、少女には辛すぎて空想の世界へ旅立ってしまう。
約束を破って、つい葡萄を食べてしまった少女…
つらい現実を生きれるほどまだ忍耐強くない。
あちら側の世界で生きる方が幸せだったのだろう。
彼女の人生なのだから…
きっと彼女の選択は正しかった。
やはり苦手なファンタジー
【辛い辛い時代を生き抜くための御伽噺。無垢なるモノの命を守るために、少女が行った事をファンタジックに描いた作品。】
ー 今作は、見る人によって、感想が異なる作品であると思う。
だが、主人公の少女、オフェリアの行いは心に残る作品である。-
■今作の舞台は、1944年フランコ将軍の軍事独裁政権下のスペインである。
・少女、オフェリアの母カルメンは、仕立て屋だった夫が亡くなり、冷酷なビダル大尉の妻として、戦地に連れられる。勿論、オフェリアも・・。
- 当初から、ビダル大尉は、カルメンもオフェリアも眼中になく、カルメンのお腹にいる、彼が男児と信じている子供の事しか、気にしていない事が、随所で描かれる。-
・そんな辛い境遇の中、オフェリアは、謎の地下への道を見つけ、そこで彼女の守護神であるというパンと出会う。パンは彼女が地下の王国の姫である事を証明するための幾つかの試練を与える。
ー これは、個人的な感想であるが、パンも地下世界も、辛い日々を生き抜くためのオフェリアの創造の産物だろうと、想いながら鑑賞した。-
・ビダル将軍に仕えながらも、実はレジスタンスに協力していたメルセデスや医師達の体制に抗う姿。
<オフェリアは、母の容態を気遣い、マンドラゴラの人形を母のベッドの下に置いたり、懸命に生きようとする。
だが、レジスタンスの抵抗に会った、ビダル大尉の行為は残虐で・・。
母が命を懸けて産んだ子を、逃がすために逃げるオフェリアに向けた銃口。
そして、彼女の現実の姿と、地下世界を支配する”王”がオフェリアに告げた言葉
”無垢なるモノのために血を流す、王国の王女として相応しい・・。”
哀しきファンタジーであるが、秀逸な作品である。>
圧倒的な暴力の中で活きる様を描いた傑作
拷問や殺人などが満載ですが、グロい場面はありません。
さわりだけ見せる。それが半端なく怖い。
暗示・ちら見せ。そして間。常に、いつ暴力が始まるのか、なんでもない場面でさえハラハラドキドキ。凍り付いた緊張感の持続…。
ハッピーエンドか、バッドエンドか。評価が分かれている。
ファシズムが横行する世界。人物造形は単純に絞りこんでいる。スペイン内乱の背景などは割愛。
力のみを信じて生きる者。
その力にすがったり、長いものに巻かれろ的に生きる者。
反抗する者。
そんな大人たちの中で生きる子ども。
ダ―クファンタジーの世界は子どもが創りだした空想なのか、
大人が現実としているもののすぐ側に開かれている異世界なのか。
現実は徹底的に容赦なく。
かといってファンタジーが甘く切なくかというかとそうでもない。そもそもパンは味方なのか、オフィリアを騙す悪魔なのか。そこもハラハラドキドキ。
何が正しくて、何が幸せに繋がるのか、常に惑わされる世界。
心の正義に従えば命の危険にさらされるし、命大事とすれば心を喪う。
これこそがラビリンス。
その表現力があまりにも見事で”ダークファンタジー”に分類されるが、果たしてそうなのか?
役者・演出・映像・脚本・音楽すべてすばらしい。
その中でもとくにビダル大尉を演じられたロペス氏(映画ごとに印象が違う)。
異世界の場面も、子どもの周りの大人たちの動向をもしっかりと描き切ったことで、上質の作品になった。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
ここではファシズム下の物語だけど、
虐待やいじめを受ける子供達の世界ってこんなんなんだろうなと思った。
虐待を受ける子供達は解離する、白昼夢を観る、嘘をつくって言う。
虐待の外に生きる私達にとってはファンタジーだけど、その中に生きる子供にとっては生き残る為に必要な現実。
そんな状況から目を背けていいのか、自分に問うてしまう。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
たくさんの大人に観てもらいたい。
でも、子どもには…、異世界部分だけ編集して見せたいかなと思う。
けれど、子どもに見せたくない現実って…、そんな世界を失くしたいと誓う。
パンは牧羊神
現実とファンタジーの中間を描く鬼才の名に恥じぬ作品
グロテスク美学に一目置くファンタジー
1940年フランコ政権下のスペインの片田舎を舞台にしたダーク・ファンタジーの異色作。スペイン内戦のリアリズム表現と少女が空想する幻想世界の特殊撮影が同時進行の物語として描写されていて、大変含蓄のある内容を持っている。だが、主人公の養父で大尉の残忍性過剰表現、少女の弟への自己犠牲愛、牧神から与えられる三つの試練の存在理由など、描写不足が残る脚本が残念でならない。物語の核心に到達していかないのがもどかしい。ラスト、少女の純粋無垢な映像美にスペイン映画の美点を再確認するものの、観る者に与える感動は、もっと深くすることが出来たのではと思わせてしまう。素晴らしいものと欠点が同居した映画。グロテスク美学のさらなるカタルシスを望む。
生粋のオタク監督、ギレルモ・デル・トロが撮り上げた大人のためのダー...
生粋のオタク監督、ギレルモ・デル・トロが撮り上げた大人のためのダーク・ファンタジー。物語の舞台は1940年代、フランコ将軍の独裁政権下にあったスペイン。自由を抑圧された人々が、独裁政権の恐怖に怯えて暮らす中で、主人公の少女も母親の再婚によって、目をつむりたくなるような現実世界と直面する。
そんな時、少女の目の前に妖精の王国の王女だと主張する妖精が現れるのだが、果たして少女が見たのは幻想なのか、それとも…。というのが物語の骨子だが、デル・トロが作り上げた世界観はとても美しく、怪しく、そして切ない。
何より着目すべきは、そのストーリーテリングの巧みさ。おどろおどろしいビジュアルに目を奪われがちだが、観客を幻想の世界に誘う語り口は見事だし、伏線の張り方も素晴らしい。アカデミー賞外国語映画賞に輝いたのも納得の1本だ。
ダークファンタジー
ギレルモ・デル・トロ監督のスペイン語作品。
今となっては、他の3人と並んで、メキシコフィルムメーカー時代を築きつつある、ギレルモデルトロだが、この当時にも圧倒的な芸術センスを見せている。
まず第一に目に飛び込んでくるのは、クリーチャーたち。とても独創的で、どこからその表現を思いつくのか想像もできない。ただのファンタジー映画ではないのが、デルトロ作品の特徴。ディズニーやワーナー・ブラザーズなどの世界的にも多くのファンを集めているファンタジー映画を連想させるような、キャラクターやプロダクションデザインは多く見られるが、それらを使って進んでいくストーリーが全く違う。ファンタジーと言われると、子供でも楽しめる、ヒーローズジャーニーのようなシンプルなストーリーラインに落ち着きがち。デルトロ作品はファンタジー要素やテイストを主役に使いながらもストーリーはもっとダークでディープな方向へと向かっていく。今作でもそう。内戦後のスペインを背景に少女の冒険と、反乱軍と独裁政権との争いを描いている。少女が冒険するファンタジー世界と少女のイノセントさを皮肉的に扱い、実際の世界の歴史や実情を描くのが本筋です。
最近、アーティスティックステイトメントを書いたのだが、私のスタイルの特徴に、超現実と現実との間のギャップを使った映画体験の提供をあげたのだが、まさにデルトロ作品はそれに通じる。私のストラークゾーンのど真ん中からは外れるのだが、この大きなギャップに視聴者が主体的に自分の価値観を反映させる余地がある。この作品を見終わった後に、ファンタジー要素を素直に楽しんだ自分と、テーマやストーリーに眠るダークさに尻尾を引っ張られているような感覚にもなる。オフェリアはなぜパンズラビリンスにたどり着けたのか、ヴィルダ大尉を突き動かしているものはなんなのか。ヴィダル大尉はオフェリアにどのような影響を及ぼしているのか。メルセデスが求めるものはなんなのか。このように全てのキャラクターをつなげるアクションのトリガーとなっている事柄がその当時の歴史的背景だったり、普遍的な大きなテーマだったりに関わってくるからただのエンタメ映画ではない。
実際、私も見終わった後には、その疑問にまだ答えを出せておらず、あまりこの映画を好きになれませんでした。しかし、このレビューを書いているうちに、この映画のポテンシャルに触れるだけの時間が取れて、どんどん好きになっているところです(笑)。2時間で終わる映画ではなく、そこから視聴者の頭の中で繰り広げられていくこの映画の中身を味わえるような映画なのです。
それにしても、メキシコ四天王やばいな。只者じゃない。作る作品も只者じゃない。一見では消化しきれない毒物的なものを感じる。
パンていう見た目が悪魔な王国の従者から3つの試練を与えられるオフェ...
パンていう見た目が悪魔な王国の従者から3つの試練を与えられるオフェリア。
メルセデスあの時ヴィダル口裂けにするだけじゃなくてブッコロせたんじゃないかと思っちゃったけど、ストーリーもビジュアルも全部良かった。痛そうなシーンは全部場面転換カットで事後にしてる。マンドラゴラや宴モンスターの造形はかなりキモかった。
容赦がない
ファンタジー要素が、えげつなさ過ぎて女の子が可哀想になって来る。
当然現実でも非常に辛い思いをしており、逃避先の世界があんな薄気味悪いところで泣きっ面にハチである。
描写のグロテスクさ容赦なさにかけては中々比肩するものがないであろう
映画で、映画に慣れている人でも顔を思わずしかめてしまうシーンが
多々ある。一番有名な「目無しの怪物」が出て来るところは
この映画を象徴する名場面であろう。
思うにファンタジー部分も陰惨として気味が悪いのは
残酷で身勝手な人間が考える空想もやはり、本質的には暗く救いがない
ことの証左なのではないか。ラストのシーンも一見輝かしい、死の淵の
甘美な夢のようだが、度々それとは対照的な無残に這いつくばる女の子
のカットインで現実に引き戻される。ファンタジーがより、生々しい現実を
浮かび上がらせるのだ。
グロめ。血がお好きな方に。
ガトーショコラ
美しくも残酷なおとぎ話
子供のダークファンタジー×大人のリアル戦争
bookの指令をもとに異世界のミッションをこなすオフェリア、息子を産んで亡くなった母、冷徹な大尉の父、反乱分子のお手伝いメルセデス。
大木の地中に住む大ガマカエル、手に目玉を付けて追いかけてくる白い巨人、3匹のリアルフェアリー、小人のように動く木の根。
至近距離で子供だろうと構わず撃たれるし、殺害シーンのエグさはちょっと他では見れない。
雨の時は青く、オフェリアが異世界にいる時は緑色の色彩構成が新鮮、それゆえラストのオフェリアが死に際に王女として宮殿に迎え入れられたときのまばゆいばかりの金色の世界は、とてもキラキラしてて切な悲しいシーンだった。
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