「スティーヴン・キングが激賞した驚異のファンタジー」パンズ・ラビリンス 佐藤睦雄さんの映画レビュー(感想・評価)
スティーヴン・キングが激賞した驚異のファンタジー
スティーヴン・キングが『オズの魔法使』以来の傑作ファンタジーと激賞した映画がある。魔法使いが出てくる『ハリー・ポッター』のように単純でないし、『ロード・オブ・ザ・リング』のように、ド派手な戦闘シーンがあるわけではない。しかし、その残酷なまでに美しいフェアリーテールに、酔った!
ギレルモ・デル・トロ監督の『パンズ・ラビリンス』だ。
スペイン内戦を背景にした、空想好きの少女をめぐる物語だ。そのオフェーリア(『ハムレット』の恋人と同じ名前だ)という少女(イバナ・バケロ)が、羊頭の牧神パンに誘われ、迷宮のような幻想世界へ誘われる。また、彼女の瞳を通して語られる一方の現実世界では、フランコ軍(独伊に支援を受けたファシズム陣営)の将校である冷酷無比な義理の父が、山中のレジスタンス狩りをおっ始めている。現実世界のほうがグロテスクに感じられる、デル・トロ監督のさじ加減がいい。ハンパなダーク・ファンタジーではないのだ。
おどろおどろしいクリーチャーを見てもまったく動じない、イバナ・バケロちゃんの無垢で澄んだ黒い瞳がとても印象的だ。
思えば、同じようにスペイン内戦が背景に描かれた、ビクトル・エリセ監督の傑作『ミツバチのささやき』の少女アナ・トレントは、怪物フランケンシュタインによって幻想世界に誘われた。イバナちゃんは、アナちゃん以来の映画史に残る名ヒロインとなった。
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