「ここまで涙が止まらなかったのは、はじめてかも」あの空をおぼえてる septakaさんの映画レビュー(感想・評価)
ここまで涙が止まらなかったのは、はじめてかも
以前にも書いたことがあるのですが、
私は、基本『死』で涙や感動を誘うのは嫌いです。
これほど、簡単に人の感情を揺さぶれるものはないから。
でも、同作の場合、
予告編から、そこにかなり重きを
置かれているのは、知っていましたので、
どのようにストーリーを運ぶのかを、
楽しみにして、見ることにしました。
そして、上映開始。。。
まず、冒頭のシーン、まだ人、
全く出てきてないのに、いきなり胸騒ぎスタート。
家族みんなで楽しく笑顔で食事。
テーブルは丸机、もちろん食卓にテレビなし。
兄弟も、本当に仲がいい。
妹は、男勝りの元気のよさで、
いっつも唄っているか、走っているか、
なにかいたずらをしているか、とにかく
止まってない、動きっぱなし。しかも、
いっつも、体温が伝わってきそうな、
満面の、ぬくもりのある、愛くるしい笑顔で。
そんな妹を、兄は、
ブツブツ言いながらも心配そうに見守っている。
こんなシーンが20分くらい続くのかな。
もう、この時点で、今も書きながらもなんですが、
涙が溢れてくる。先、わかるんです。この兄弟の
いずれかが、死んでしまうんだって。それを
想像すると悲しくて、悲しくて。「お願いだから、
こんなに、いい兄弟を、親から奪わないで」って
もう、此処からラストシーンまで
要所要所で、泣きっぱなし、号泣に近い。
劇場からも、鼻水をすする音が、そこら中から聞こえてきた。
妹が死んでから後は、
過去と現在を、行き来させながら話は進んでいく。
過去は、生前の妹の家族との触れ合いが中心。
現在は、
「自分のせいで、娘を死なせた」と娘の名前を
口に出来なくなってしまい、家族とも、まともに
会話が出来なくなるほど、自分を責め続ける父。
妊娠中であるにもかかわらず、
食事を口にすることが出来ないほどふさぎこむ、母。
そんな、両親を元気付けたいと、
頑張るけれども「絵里奈にはなれないよ」と、
落ち込む兄、英治。
3者3様の、絵里奈への思いを
抱きながら、話は、進んでいく。
そのエピソード一つ一つに、
また、泣けてきてしまう。
絵里奈が写った、
一番のお気に入りだった写真を叩き割る父、
ピアノ教室で、子供をあやす母親を見つめうろたえる母、
届くはずもない絵里奈への手紙を書き続ける兄。
もちろん、
話は、暗い絶望だけでは終わらない。
「時は悲しみを癒してくれ、
影があれば、光がある」のだ。
新しく産まれてくる子供のため、
母と英治は、絵里奈の部屋を片付ける。
思い出を、噛み締めながら。でも、それは
後ろ向きではない、新しい未来へ向けての一歩なのだ。
しかし、父親だけは、殻に閉じこもったまま。
絵里奈の部屋を片付けたことで、夫婦喧嘩をしてしまう。
母は「そうよ、あなたが絵里奈を殺したのよ!」との
泣きがらの、叫びを残し、家を飛び出してしまう。
そんな2人を、もう一度結びつけたのは英治。
絵里奈との思い出の地へ、山へ行き、遭難。
また、一人愛する子を失ってしまう恐怖に
かられた両親。特に、また自分のせいでわが子を
うしなうかもしれない、自分の愚かさに、ようやく
気がついた父親は、過去の思い出を紐解きながら、
英治のもとへ、辿り着き、かたく抱きしめあう。
晴天の翌日、絵里奈が大好きだったログハウスを
家族3人で片付ける。「絵里奈のものがこんなに
でてきたよ」絵里奈が事故で死んだ後、ようやく
父親が絵里奈の名前を口にした瞬間だった。
終盤、絵里奈の部屋を新しく産まれてくる
赤ちゃんのため、家族で壁の塗り替えをしていたとき、
英治が、これまで親には口に出来なかったことを話し出す。
事故の直後、自分の身体から離れ空を飛んでいたこと、
それも、絵里奈と一緒に。そして、自分の身体に戻って
来たときに、父親が呟いた一言が頭を離れなかった、と。
「どうして、絵里奈なんだ・・・」
英治は
「父が絵里奈でなく英治が死ねばよかったのに」との
意味で言ったと思い、どうして自分が生き残ったのかと
自分を責め続けていたのだ、と。
ラストシーン、
産まれてきた赤ちゃんと家族4人で、
絵里奈との思い出の地へ、ハイキングへ。
家族それぞれが絵里奈へ綴った手紙を
風船に結びつけ、青空へ飛ばして、映画は終わる。
ここまで、ストーリーを覚えてることって、
お恥ずかしい話、滅多にないんですね。
それくらい、強烈なインパクトを与えられた。
特別に好きな役者さんが出ていたわけでもなかったんです。
なのに、妙に引っ掛かるものがあった。
その、引っ掛かりは、私にとっては、
感謝すべき、引っ掛かりでした。
素敵な涙をありがとうございました(笑顔)